■体内にマイクロチップを注入?

 

 とりあえずビル・ゲイツの容疑は晴れたと思うが、では、ワクチン陰謀論で語られるような、「注射で体内に注入できるマイクロチップ型の医療機器」はありえるのか?──それが、なんと妄想ではなく現実に存在するのだ。

 

マイクロチップ
これが注射針の先より小さい、コロンビア大学が開発したマイクロチップだ。

 それが米・ コロンビア大学の研究チームが開発した生体センサで、サイズは幅0.3ミリ、長さ0.38ミリ、厚さ0.57ミリ。塩粒より少し小さいぐらい。体に注入するマイクロチップとしては現状で恐らく一番小さい。一番小さいと言っても、目には見える。こんなものがワクチンに入っていたら、誰かが必ず気づくだろう。

 

 注入されたマイクロチップは、Wifiで自動給電しながら体内の生体情報を体の外へ送信する。といっても、今のところ測定できるのは体の温度変化ぐらいで、しかも、今はまだ動物実験の段階。陰謀論者の言うようにマイクロチップで洗脳するなんて、まだまだ先の話。みんな科学に夢を見過ぎている。

 

 ……と思っていたのだが、侮れない。近い将来には、脳をマイクロチップで操作することも不可能ではなくなるかもしれない。実は脳をマイクロチップで操作する研究は、すでに始まっていたのだ──。

 

■悪の軍事研究所が脳改造を!?

 

ニューログレイン

人間の脳に数千個の超小型チップを挿入、脳を操作? そんな研究が進んでいる

画像:ブラウン大学 https://www.brown.edu/news/2021-08-12/neurograins

 こんなトンデモナイ研究を進めているのが、前回「軍事技術と科学の切手も切れない関係」で登場した、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)。こちらも陰謀論界隈では「悪の秘密研究所」としておなじみだ。

 

 そのDARPAが進めるトンデモナイ計画とは、外科手術なしで脳の内容を書き換えできるシステムを開発するというもので、正式名称は「次世代非外科的神経技術(Next-Generation Nonsurgical Neurotechnology)」、通称N3。陰謀論者のいう、マイクロチップで人間の記憶を書き換えたり洗脳したりする技術を本気で開発しようとしているのだ。

 

 実際の開発に当たったのは、医学研究では全米で5本の指に入る ブラウン大学の研究チーム。前述したコロンビア大学の作ったマイクロチップとほぼ同サイズのチップを「ニューログレイン」と名付け、マウスの脳に48個挿入。実際に脳の動きをリアルタイムで測定することに成功した。

 

 

■ナノサイズの医療ロボットも!

 

ナノロボット

映画「ミクロの決死圏」や「ミクロ・キッズ」の世界が現実のものに!?

画像:shutterstock

 現在のシステムでは最大770個のマイクロチップで情報をモニターでき、将来は数千個も可能だという。この先、仮に数千個扱えるようになれば、人間の脳にチップを入れて脳の状態を監視することができようになる。

 

 そして、あくまで「理屈の上では」だが、そうやって脳の状態をリアルタイムで把握できれば、逆にマイクロチップから電流を流して神経を刺激、意識を変えることもできるのでは? と研究チーム。陰謀論者の恐れるマイクロチップで洗脳の世界は、50年後には現実になっているかもしれない。

 

 さらに! センサを入れるだけではなく、血管にロボットを入れて、体内から病気を治そうという、古典SF映画の傑作「ミクロの決死圏」のような研究も始まっている。にわかには信じがたいだろうが、ナノサイズ=1000万分の1ミリ単位という超極微の ロボット「ナノボット」があれば可能で、しかも今、この分野でトップを走っているのは日本だ。

 

 中編(12月28日21時公開予定)では、日本発のぶっ飛んだナノ医療技術「ナノボット」が世界をどう変えるのかを見てみよう。