韓国の食堂に入り、テーブルを前に座ると、さまざまな小皿が出てくる。キムチ、もやしナムル、小魚、練り物、ニンニク、唐辛子、味噌……。その数は10種類を超えることもある。

 ビールやソジュという韓国の焼酎を飲むとき、その小皿のおかず(반찬/パンチャン)だけで満足してしまうような気になる。つまみがずらりと並ぶような感覚。メインの料理を注文しないわけにはいかないが、それがなくてもいいのでは……と思ってしまう。

■韓国の食堂で出される小皿のおかず、すべてお代わりOK?

 韓国に通いはじめた頃、この小皿はお代わり自由だと思っていた。なにかのガイドブックにそう書いてあったのかもしれない。

 ソウルの東大門の店に入ったときだったろうか。焼き魚専門の店だった。テーブルにつくと、さまざまな小皿が出てきた。そのなかに、イカにわたを加えて炒めたようなものがあった。あまり目にしない小皿だった。

 ご飯の上にそれを載せて食べてみた。イカの塩辛のような味でコクがあり、ご飯に合う。そのときは、日本に留学経験のある韓国人と一緒だった。彼もそれをご飯に載せて食べていた。

 小皿の料理は量が少ないから、すぐになくなる。

「これ、お代わり頼みたいんだけど」

 僕がそういうと、彼はちょっと困ったような顔をして、周囲を見渡した。

「店の人にいえば出してくれると思うけど、周りをみても、この小皿をお代わりしている様子がないんです。僕はこの店にときどきくるけど、このイカの小皿ははじめて。今日はイカが安く手に入ったら、特別サービスで出しているのかも」

「じゃあ、お代わりはできない?」

「できるとは思うんだけど……」

 彼は言葉を濁した。

 テーブルに並ぶ小皿には、お代わりできるものと、できないものがある……。僕は悩みはじめてしまった。日々、韓国料理に接している彼らは、なんとなく、お代わりの線引きができるのかもしれない。しかしたまにやってくる旅行者にはその判断はなかなか難しいのだ。

水原の名物、味付きカルビ。メイン料理を頼むと小皿のおかずがついて出てくる 撮影/中田浩資