『大福マートゥ』を通り過ぎ、路地を進むと、『デソン食品』が見えて来る。ここも健在でホッとする。口数は少ないがじつは面倒見のよいお姉さんの作る片面焼きの目玉焼きが食べたくなった。

 その近くの『トンイル食品』も『チャンジョ食品』もそのままだった。このエリアが再開発の対象になっていないこともあるが、慢性化している不景気と物価上昇で、安く飲める酒場としてシュポのありがたみが再認識されていることもあるだろう。レトロブームも手伝って、それまで見かけなかった若い客も増えているようだ。

 シュポの魅力を伝える韓国映画の筆頭が『ワンドゥギ』だ。劇中、タルトンネにあるシュポで、高校教師役のキム・ユンソクと旅芸人役のパク・スヨン、武侠小説家役のパク・ヒョジュがマッコリを飲むシーンは、韓国映画史に残る飲酒名場面である。

『デソン食品』の変わらぬ姿に安心する
『デソン食品』でよく食べた目玉焼き(ケランフライ)
確認できなかったが、『トンイル食品』のハルモニは元気だろうか?
『トンイル食品』でくつろぐ常連さんたち

 都会的な風景とアジア的な猥雑な風景がまだらになっているところがソウルの魅力である。乙支路4街駅周辺の路地裏には、この近くにある芳山市場や中部市場とともにいつまでもそのままでいてほしい。のんきな旅行者の勝手な言い分であることは重々承知である。

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