当初のイメージは良くなかった。

 役柄で悪役を演じているとはいえ、鋭すぎる眼光が不気味だった。それゆえ、個人的に敬遠している部分があった。『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』での話である。

 チャン・ギヨンが演じたグァンイルは闇金融で働く危ない男。IUが演じるヒロインのジアンに対してしつこく威圧的に借金を取りに来る。それだけでも印象が悪かったのに、ドラマの序盤ではジアンに酷い暴力をふるう場面があった。

 屈強な男が華奢な女性を殴るというシーンは、放送当時に韓国でも大きな批判を巻き起こしていた。それゆえドラマでグァンイルが出る度に暗い気持ちになっていた。

 しかし、中盤から変化があった。イ・ソンギュンが演じた「おじさん」のドンフンとジアンが仲良くビールを飲んでいるところを、窓の外からグァンイルが寂しげに見ているシーンがあった。その時のチャン・ギヨンの演技は情緒が深かった。

 それ以来、グァンイルを見る目が変わった。彼はジアンを心から愛している。執着してまとわりつくのも、自分を無視しないでくれという愛情表現だった。やがて、グァンイルはジアンのために自らを犠牲にする精神まで発揮していく。

 考えてみれば、当初のグァンイルへの捉え方が自分なりに画一的すぎた。彼はもっと内面に深いものを持った男だったのである。そんな男をチャン・ギヨンは繊細で哀愁をもって演じていた。

 もはや当初の悪いイメージはなくなり、チャン・ギヨンに対して強い関心を持つように至った。『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』での悪役を経た彼は一気に主役級のスターに成長し、精悍な表情を見せるイケメンとして大活躍していった。

■悪役から主役級へ!チャン・ギヨンの演技が光る『今、別れの途中です』

 たとえば、『今、別れの途中です』ではソン・ヘギョと共演して、才能豊かなカメラマンのユン・ジェグクを演じた。

 印象的な場面があった。ソン・ヘギョはファッションメーカーのチーム長のハ・ヨンウンを演じているが、急な撮影が必要になった時に「ワケあり」の見合い相手であったユン・ジェグクに依頼する。彼女は撮影時に様々な指示を出すのだが、ユン・ジェグクはそれを聞かずに自分の独自の撮影スタイルを守りきって見事にやりきった。

 この時のチャン・ギヨンの演技が絵になっていた。いかにも才能豊かなカメラマンであることを端的に見せる動作で物語に真実味を与えた。