「元祖南山王トンカス」をめざした。この界隈ではよく知られた老舗だった。しかしシャッターは降ろされていた。休業日にあたってしまったらしい。
通りに連なるトンカス店をのぞきながら歩く。11時半。昼には少し早いが、すでにテーブルが埋まりはじめている。
「101番地 南山トンカス(101번지 남산돈까스/101 Namsan Pork Cutlet)」という店に入った。最近の韓国では、豚肉の間にチーズを挟み込んだチーズトンカスが人気だという。韓国料理はいま、さまざまな料理にチーズを加えてバリエーションを広げる傾向がある。その流れにトンカスも乗っているのかもしれないが、やはりここは王道を食べて見るべきだろう……とトンカスを頼んだ。1万1500ウォン、約1200円だった。
いまのソウル風の清潔な店だった。開け放たれた窓から南山を包む木々が見渡せる。
ほどなくしてトンカスが出てきた。大きくて薄いトンカスにデミグラスソースがかかっている。脇にご飯とサラダ。そして煮豆に青唐辛子。お決まりのコーンスープは別皿。メインの皿はシンプルな盛りつけで、サラダにはリンゴが入っていた。青唐辛子が韓国っぽいが、店内には自由にとれる食材コーナーがあり、そこにはしっかりキムチやたくわんも並んでいた。
デミグラスソースはやや甘めだったが、トンカスとの相性はいい味つけだった。トンカスは大きく、食べ応えがある。途中で唐辛子をかじり、水を飲む。コーンスープを掬うスプーンになかなか手がのびない。やはりトンカスにコーンスープは合わない気がする。
そんなことを思いながら、フォークとナイフを動かした。