テレビ東京で毎朝(月曜日から金曜日まで)放送されている「韓流プレミア」で、9月1日からオンエアされるのがドラマ『赤い袖先』である。韓国MBCで放送されたのは2021年11月から2022年元日までだったが、ブームを呼ぶほどの大ヒットを記録した。そして、ようやく日本でも地上波で初放送を迎えることになった。

2PMジュノ主演『赤い袖先』は、演出・脚本・撮影・キャスティングが見事に結実!

 ドラマ『赤い袖先』には原作がある。韓国でベストセラーとなった小説『赤い袖先(原題/옷소매 붉은 끝동)』(カン・ミガン著)だ。この小説は朝鮮王朝史で最も有名な世孫(セソン/国王の正式な後継者となる孫)が苦難の末に即位してやがて名君イ・サンになっていく過程が描かれているが、物語そのものは彼が愛した宮女ソン・ドギムの視点が中心になっている。

 特に、身分の差を乗り越えて王族と宮女が精神的にお互いを高めていく様子が繊細に綴られており、チョン・ジイン監督が原作に惚れ込んでMBCに働きかけて素早く版権を獲得したという。そうやってドラマ化が実現しただけに、彼女の熱意が作品の全編に注ぎ込まれている。

 しかも、チョン・ジイン監督はチョン・ヘリ脚本家に「原作より史実を増やしてほしい」と依頼したおかげで、ドラマは小説より重厚に歴史的な事実を織り込んでいる。最近は架空の設定の時代劇が増えてきたが、ドラマ『赤い袖先』は激動の大事件が多かった18世紀後半の出来事を重厚に扱っていて、本格派の歴史ドラマとしても見せ場がとても多い時代劇に仕上がっている。

 とはいえ、ドラマの本質は「王族男子と宮女の時代を超えた至上の愛」である。その精神性を豊かな感性で表現していて、既存の時代劇の中でも抜きんでた完成度を誇っていた。しかも、繊細な美意識が随所で感じられる「洗練された映像美」は、特筆すべきレベルに達していた。

 これは、チョン・ジイン監督の力量のおかげであると同時に、撮影監督と照明監督のコンビネーションが抜群だったことを示している。そういう意味で、ドラマ『赤い袖先』は演出・脚本・撮影の三位一体が見事に結実した作品だと言える。