この食べ方からヒントを得たあるムーガタチェーン店は、野菜をキャベツの千切りに絞り、これは食べ放題。肉類はビュッフェスタイルの食べ放題ではない注文式にした。
これがあたった。スープ部分にはキャベツが山盛りで入れられる。肉を焼く間に、キャベツはスープのなかでしんなりしてくる。スープには肉汁が加わってうま味を増す。キャベツを頬張るタイの女性たちを見ると、これはダイエット焼肉ではないかと思ったほどだった。
韓国焼肉は、タイではムーガタに姿を変えて進化したわけだ。実際、食べてみると、焼肉を食べているのか、鍋を食べているのかわからなくなる。しかしそれは焼肉にこだわった発想であって、タイ人たちはなんの疑問も挟まずにせっせと肉や野菜を食べる。
慣れるまで少しというか、だいぶ時間がかかるのは、日本人、そして韓国人だろう。
このムーガタについて、タイのある新聞が韓国人へのインタビュー記事を載せていた。語っているのは韓国人の駐在員。家族でバンコクに暮らしていた。
「あれは韓国の焼肉じゃありません。私も妻も好きじゃない。なんだか焼肉も中途半端、鍋と考えても中途半端。でも、子供はムーガタのほうが韓国式焼肉や鍋より好き。困ってしまいます」
そんな話をソウル在住に日本人に話すとこんな答えが返ってきた。
「ムーガタはもうとっくに韓国に逆上陸してますよ。去年かな、話のタネだと思ってそんな店に入ってみたけど、お客さんは少なかった。その後、広まっているっていう話も聞きませんね。たぶん韓国ではダメかも」
韓国人の焼肉へのこだわりということだろうか。