大ヒットロマンス史劇『赤い袖先』の登場人物の中で異彩を放っていたのが、チャン・ヒジンが演じた大妃(テビ)キム氏であった。

 ジュノ2PM)が演じたイ・サン正祖)の祖母にあたる女性で、歴史的には貞純(チョンスン)王后と呼ばれている。彼女は、史実ではどんな女性だったのだろうか。

■『赤い袖先』で2PMジュノが演じたイ・サンと大妃キム氏、史実では何があったのか?

 大妃キム氏はイ・サンの祖父・英祖(ヨンジョ)の二番目の正室である。英祖と51歳も歳が離れていたので、義理の孫にあたるイ・サンともあまり年齢差がなかった。わずか7歳の違いだったのだ。

 それでも、朝鮮王朝は「長幼の序」について厳格なので、イ・サンは最上位の礼儀を尽くして大妃キム氏に接していた。

 しかし、イ・サンの内心は憤怒が満ちていたに違いない。大妃キム氏は父の思悼(サド)世子を陥れる陰謀に加担した可能性が極めて高かったからだ。それゆえ、イ・サンが即位した後に彼は大妃キム氏を処罰こそしなかったが、常に警戒して彼女の自由を束縛するような動きを見せていた。

 ところが、『赤い袖先』での大妃キム氏は悪女のような雰囲気を出していなかった。そういう意味で、このドラマは意外なほど大妃キム氏に好意的だったと言える。

 しかし、史実で彼女が行ったことを詳細に記せば、初めて知った視聴者はかなり驚くのではないだろうか。 

 果たして、歴史的にイ・サンと大妃キム氏の間にはどんなことがあったのか。

 一番問題だったのは1800年6月だ。48歳のイ・サンが高熱を発して身体にできた腫れ物で苦しんでいた時期だ。そんな状況の中でも、イ・サンは薬を調合する現場を実際に自ら視察している。毒殺されることを極度に警戒していたからだ。

 また、医官たちが「腫れ物が出ている患部を診察させてください」と言っても、イ・サンは許可しなかった。彼らを信用していなかったからだろう。それほど猜疑心が強くなっていたイ・サンは、ついに6月28日に重体に陥ってしまった。

 その局面になって登場したのが大妃キム氏であった。彼女は重臣たちを病床から遠い部屋に強制的に下がらせて、たった1人でイ・サンを見守っていた。その間にイ・サンはこの世を去ってしまった。

 駆け付けた重臣たちは大妃キム氏に強い抗議を示した。臨終の場に立ち会ったのが彼女だけであったからだ。イ・サンの遺言を操作するかもしれない。なにしろ、大妃キム氏は誰が見てもイ・サンの最大の政敵であったのだ。