1753年に生まれたソン・ドギムの父親は、恵嬪ホン氏の実家で働く使用人であった。その関係から、恵嬪ホン氏の父親・洪鳳漢(ホン・ボンハン)の配慮で、ソン・ドギムは9歳のときに宮女になることができた。

 さらに、王宮に入ったときもソン・ドギムは恵嬪ホン氏のもとで修業を積む生活に入った。その縁があったからこそ、ソン・ドギムは9歳のときからイ・サンや2人の妹たちと顔なじみになれたのだ。これが彼女の人生を決定づけたわけであり、イ・サンとの深い愛の物語はこの連載でも細かく紹介している。

 その後、ソン・ドギムは側室の宜嬪(ウィビン)ソン氏となり、イ・サンとの間に長男の文孝(ムニョ)世子を産んだが、母子ともに1786年に世を去っている。世子の祖母であった恵嬪ホン氏(恵慶宮)にとっても本当に辛いことであった。

 このような経緯を振り返りながら『赤い袖先』を見ると、より深くドラマに没入できる。終盤で恵嬪ホン氏がソン・ドギムを助ける印象的な場面があった。

 それは、イ・サンの側室だった和嬪(ファビン)ユン氏の策略によって、ソン・ドギムが「王宮の外で男と密会を重ねている」という嫌疑をかけられたときだった。ソン・ドギムが会っていたのは実の兄であり、兄の官職に影響が出ることをおそれてソン・ドギムが弁明をしなかったのだが、代わりに真実を述べて窮地のソン・ドギムを救ったのが恵嬪ホン氏であった。

 演じたカン・マルグムは主演映画『チャンシルさんには福が多いね』のほか、バイプレイヤーとして『39歳『離婚弁護士シン・ソンハン』良くも、悪くも、だって母親』など数多くの作品に出演している。

 舞台でキャリアを積んだ演技派の女優だが、この場面での恵嬪ホン氏の毅然とした態度は、ソン・ドギムへの情感が繊細に感じられて好意的な余韻が残った。

●作品情報

『赤い袖先』

[2021年/全17話]※TV放送は日本編集版の全27話

演出:チョン・ジイン、ソン・ヨナ 脚本:チョン・ヘリ

出演:ジュノ(2PM)、イ・セヨン、カン・フンイ・ドクファ

DVD&Blu-ray販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン