3月末、実に9年ぶりに「鎮海(チネ)軍港祭り」開催中の鎮海を訪ねた。

 韓国南東部の慶尚南道昌原特例市の南西部に位置する鎮海は、日本統治時代に軍港都市として開発された街だ。中原ロータリーを中心に放射線状に伸びた道路沿いに桜並木が続く。

 街全体では約36万本の桜の木が植えられており、桜の開花時期に合わせて開催される鎮海軍港祭りの期間には大勢の観光客で賑わう。

 10日間の開催期間(2024年3月23日~4月1日)のうち、今年は5日間が雨天だったにも拘わらず、来場客が300万人を超えるほど、鎮海軍港祭りの人気は、韓国の数ある桜祭りの中でも随一である。

鎮海の東部にある帝皇山から眺めた鎮海の街並み

■純愛ドラマ『ロマンス』のロケ地、慶尚南道・鎮海、余佐川の桜並木を歩く

 鎮海の桜の美しさは、キム・ジェウォンキム・ハヌル主演の大ヒット作『ロマンス』(2002年)でも紹介されている。

 交通事故をきっかけに出会ったチェ・グァヌ(キム・ジェウォン)とキム・チェウォン(キム・ハヌル)は、鎮海(チネ)の桜祭りの会場で再会し、互いに惹かれあう。

 急用ができたグァヌは、「昼にまたここで会おう」とチェウォンに約束してその場を去るが、グァヌの父の死により約束を果たせず……。生活が一変したグァヌ一家はソウルへ引っ越す。グァヌは、転校先のソウルの高校で教師となったチェウォンと再会する、というストーリーだ。

 教師と生徒との禁断の愛をテーマにしたドラマだが、劇中でも鎮海の美しい桜がドラマに彩りを添えている。

 劇中で2人が再会したのは鎮海を南北に流れる余佐川(ヨジャチョン)に架かる橋で、このドラマにちなみ「ロマンス橋」と名付けられた。

 この川の両岸に植えられた桜並木は、実に見事である。左右両岸からピンク色の雲が覆いかぶさるように川の上で花開く桜は、筆舌に尽くしがたい美しさだ。

桜の開花時期にはドラマロケ地である余佐川にかかる「ロマンス橋」にも大勢の観光客が訪れる