■ラ・ミラン主演映画『市民ドクヒ』、コンミョンヨム・ヘランアン・ウンジンほか共演の話題作

 筆者がラ・ミランを最初に認識したのは映画『亀、走る』(2009年)だ。忠清南道の田舎町で主人公の刑事(キム・ユンソク)が売買春摘発のために仕掛けたおとり捜査に引っかかった年増の風俗嬢を演じたのが彼女だった。客(シン・ジョングン)を適当にあしらう演技はじつにリアルだったが、こういうシーンでも陰鬱にならず、牧歌的なおもしろみを出せるのがラ・ミランの魅力だろう。江原道出身でありながら、とぼけた味わいの忠清南道訛りも自然にこなしていた。

『亀、走る』の名演技が映画関係者の目にとまったのか、このあと映画出演作が急増。2010年にはナ・ムニ主演の『ミスギャングスター』をはじめ7作に。2012年にはオム・ジョンファとともに激しく歌い踊るシーンが話題になった『ダンシング・クイーン』をはじめ9作に出演。映画と並行して、ドラマにもコミカルな脇役で出演する。

 2014年には1,400万人以上を動員した大ヒット映画『国際市場で逢いましょう』で主人公ファン・ジョンミンの叔母役を演じて、認知度がアップした。2016年には『ザ・メイヤー 特別市民』でチェ・ミンシクの向こうを張るソウル市長候補役を演じている。

 2015年の大ヒットドラマ『恋のスケッチ~応答せよ1988~』では、主人公の1人ジョンファン(リュ・ジョンヨル)の母親役で、愛情にあふれる一家の悲喜こもごもなエピソードをリアルに体現した。

 さかのぼって、ラ・ミランの映画デビューは、2005年の話題作『親切なクムジャさん』(パク・チャヌク監督)。イ・ヨンエ扮するクムジャと同房の女囚役だった。汚れ役だったが、映画デビュー作とは思えない堂々たる存在感を示していた。

 その翌年には、ソン・ガンホ主演の『グエムル-漢江の怪物-』(ポン・ジュノ監督)にも出演。漢江の岸辺に突如現れた化け物に襲われるが、間一髪助かる行楽客を演じているので探してみてほしい。

『ガールズ・コップス』で上司を演じたヨム・ヘランと再びタッグを組んだ、2024年の新作『市民ドクヒ(原題)』では、フィッシング詐欺団と戦う一般市民を演じている。本作は今年の百想芸術大賞に複数の部門でノミネートされるなど高い評価を受け、日本での公開も予定されている。

 他のキャストは、『エクストリーム・ジョブ』のコンミョン、『良くも、悪くも、だって母親』でも共演したアン・ウンジン、『涙の女王』でキム・スヒョン扮する主人公の姉を演じたチャン・ユンジュなど、注目若手から個性派までそろう注目作だ。