ラーメンもピビムククスもごちそうとはほど遠い食べ物なのだが、どういうわけか記憶に残りやすい。

 過去のドラマや映画を振り返ると、『D.P.-脱走兵追跡官-』ではチョン・ヘインク・ギョファン『離婚弁護士シン・ソンハン』ではチョ・スンウキム・ソンギュンが演じる登場人物たちが、ラーメンを美味しそうにすするシーンが目に焼き付いている。

 また、酔っ払い映画の金字塔『昼間から呑む』でも、パッと思い出すのは、失恋して一人旅している主人公(ソン・サムドン)が江原道の砂浜でソジュを飲みながらカップラーメンをぼそぼそ食べるシーンだったりする。

『昼間から呑む』の主人公を真似て筆者が食べたカップラーメンとソジュ

 筆者の忘れられないラミョン追憶(チュオク)は2007年、韓国本土最果ての地、海南全羅南道)のターミナルで、ソウル行きのバスの時間を気にしながらすすりこんだラーメンだ。

 日本のみなさんもご承知のように、韓国では飲食店のメニューにラーメンがあっても、それは日本のように手の込んだものではない。袋入りのインスタントラーメンを茹で、卵を落とし、ネギを散らしたものがふつうだ。

 それなのに、添えられたカクトゥギ(大根の角切りキムチ)の食感はもちろん、カウンターの目の前に並んでいた卵やハンバーガーまでよく覚えている。不思議なものである。

 日本はラーメン先進国で、韓国のインスタントラーメンも、もともとは日本の技術協力で生まれたものだが、我が国には日本とはまた違ったラーメン情緒がある。物価高、しかも円安で日本の旅行者も節約を余儀なくされていると思うので、滞在中、一度は韓国ラーメンを経験してもらいたい。