ソウル江南に、どんぐり専門の店をみつけた。店の名前はずばり「どんぐり家」である。外観はカフェのようだった。どんぐり料理の店は、民族料理店風かと思っていたが。

 2年前にできた店だった。中年女性4人ではじめたという。店で話を聞くうちに、店のコンセプトのようなものがわかってきた。

 どんぐり料理の店というより、防腐剤を一切使わない素材、そして砂糖もノー。その発想で料理を考えていったとき、どんぐりに出合ったといった感じだった。

■ソウルで見つけた「どんぐり」料理店、健康志向で人気に

 アプローチはどうにせよ、僕の目的はどんぐり料理である。メニューはその期待に応えていた。どんぐり料理がズラーと並んでいたのだ。

 そのなかから3品を頼んだ。

・どんぐりを使ったゴマすいとん(1万5000ウォン)

・どんぐりのチヂミ(1万5000ウォン)

・どんぐりカルグクス(1万2000ウォン)

 ゴマすいとんは、人気メニューなのでぜひ……と店からすすめられた。

 料理は同時に出てきた。まずはゴマすいとん。すいとんをどんぐりの粉からつくっている。スプーンにすいとんを載せてみる。黒ずんだ塊で、どこか「そばがき」を思わせた。ひと口食べてみた。歯ざわりは柔らかい。ゴマの風味が効いていて、なかなかの料理という気がする。

どんぐりを使ったゴマすいとん。タマネギのしゃきしゃき感とすいとんの柔らかさがマッチする

 つづいてどんぐりカルグクス。やはりは浅黒く、そばに似ている。麺を啜ってみる。手打ちそばを啜っているような感覚だった。スープはさっぱりとしている。この料理もレベルは高い。

 店にはソウル在住の知人と入った。互いに手をのばして、それぞれを味わってみる。知人は「どんぐりこんにゃく」ともいわれるトトリムクは何回も食べていたが、どんぐりの麺やすいとん、そしてチヂミははじめてだった。ソウル在住組には、そんな人が多い気がする。

どんぐりカルグクス。そばを啜っている感覚。トッピングの海苔が風味を倍増させる