Netflix話題作『おつかれさま』は、3回目の配信(9話~12話)からムン・ソリ扮する母エスンとパク・ヘジュン扮する父グァンシク、IU扮する娘クムミョンが物語の核になってきた。

 なかでも1990年を背景とした9話は、クムミョンの弟ウンミョン(カン・ユソク)や、映画館の看板描きのチュンソプ(キム・ソンホ)の男女関係の騒動がなかなかの見ものだ。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『おつかれさま』9話の時代背景、今とは比べられないくらい男女の垣根が高かった

 1990年というと日本はバブル経済真っ盛り。一方、我が国はというと1987年末の大統領選挙の国民投票の実現で一応の民主化が成ったとはいえ、選ばれたのは全斗煥(チョン・ドゥファン)前大統領と同じ軍人出身の盧泰愚(ノ・テウ)だった。

 1988年のソウル五輪は成功裡に終わったとはいえ、経済的には問題山積。当時の韓国から見たら、日本は影をも踏ませない先進国のひとつだった。そんな時代に娘クムミョンを日本に留学にやった母エスンの苦労は想像に難くない。自身が果たせなかった夢を娘に託した格好だ。

 当時の韓国は、経済力や文化的成熟度という点で日本と20年以上の差があった。それは性意識という点でも同様だった。それでなくても韓国は儒教道徳を重んじる国。ウンミョンやチュンソプの恋愛騒動がどれほど破廉恥に映ったか、ドラマとはいえ、自分が当事者だったらと思うとゾッとした。

 救いはエスンやグァンシクが息子のやったことと自らの過去を重ね合わせてバツが悪そうにするところだ。こういうのを日本語では、「血は争えない」とか「親の因果が子に報い」と言うのだろう。エスン&グァンシク世代(1950年代生まれ)、クムミョン世代(1969年生まれ)の視聴者は思わず笑ってしまったはずだ。

Netflixシリーズ『おつかれさま』独占配信中