Netflixグルメバラエティ隣の国のグルメイト』11話では、福岡出身の松重豊がソン・シギョンを連れて博多の街でまんじゅう(回転焼き)を買い食いしたり、うどんの老舗で小エビ入りかき揚げうどんを食べたりした。

 九州独自の食文化は、韓国人である筆者には大変興味深く、二人の会話には注目すべき点が多々あった。今回は博多うどんのスープを味わったソン・シギョンの感想から派生した、おでんのつゆの話を取り上げる。

■韓国と日本のおでん、おでんのつゆを飲む? 飲まない?

『隣の国のグルメイト』11話。大阪にお気に入りのおでん屋さんがあり、「そこのスープ(つゆ)がもっと飲みたいんですが、お店の人はくれなかった」と言うソン・シギョン。それに対し、松重豊は、「おでんのスープが美味しいのはわかるけど、あれは飲むもんじゃない」とはっきり言った。

 韓国では日本植民地時代にもたらされたおでんが、ストリートフード、ファストフードとして定着し、たいてい一種類の練り物を串に通したものがスープにつかって売られている。トッポッキスンデを商う店ではかならずと言っていいほどおでんに出合える。飲み屋のつまみとしてオデンタン(おでん鍋)も一般的だ。

 ソン・シギョンが言っていたように、韓国人は汁物が大好きなので、おでんを食べるときはおたまでつゆ(オデンクンムル)をすくって紙コップに注ぎ、「ふ~ふ~」しながら飲むのはどこでも見られる光景だ。おでんだけでなく、トッポッキを食べるときも口直しのような感じでおでんのつゆを飲む。お茶代わりと言ってもよい。

韓国では飲み屋のつまみとしてオデンタン(おでん鍋)も一般的
トッポッキとオデンクンムル(左上)

 日本の人は本当におでんのつゆを飲まないのだろうか?

 筆者は東京・赤羽のおでんの店で出し割り(日本酒をおでんのつゆで割ったもの)を飲んだことがあるので、日本でもおでんの汁は飲むものだと思っていた。もちろん、韓国人が平壌冷麺のスープを飲むようにゴクゴクとではなく、おでんがよそわれた器に口をつけて味わうという意味だ。

 日本各地に住む知人数人に聞いてみた。大阪に住む50代男性(愛知県出身)は、自分は飲むし、周囲でも飲む人は珍しくないと言う。大衆酒場が密集している京橋駅前には、出汁割りを飲ませる立ち飲み屋もあるそうだ。先日の連休で和歌山を旅行したときに入った居酒屋では出汁割りを飲んだそうだ。

大阪在住の知人が和歌山で飲んだ日本酒の出汁割り

 大阪に住む50代女性(岡山県出身)は、大阪のおでんのつゆは澄んでいるので、ゴクゴクとではないが、味わう程度には飲むと言う。

 北陸新幹線開通後、脚光を浴びた金沢おでんの故郷、金沢出身の40代男性(東京在住)も、味わう程度には飲むと言う。金沢おでんは関西風でつゆが澄んでいるそうだ。

専門店の金沢おでん

 東京在住の50代男性(埼玉県生まれ)は、頼んだおでんが小皿に盛られて出てきたら、まずつゆを味わうと言う。冬場は思わず、「あ~」という声が漏れるとか。家でおでんを煮るときは、水多めで薄味にしてスープを飲むのが楽しみだそうだ。

 また、札幌在住(室蘭生まれ)の50代男性は、北海道のおでんのつゆは醤油ベースで濃いので飲む人は少ないと言う。日本酒の出汁割りも聞いたことがないそうだ。

 ごく少数の限られた聞き込みに過ぎないが、おでんのつゆを飲むかどうかは、地域や個人によって違うようだ。