『隣の国のグルメイト』でソン・シギョンが言っていたように、ジョンを揚げ焼きするときの油の匂いがすると、何かお祝いごとでもあるのかなあと思うのは、韓国人に共通する情緒だ。

 健康に気をつかう今は油が悪者扱いされることも多いが、韓国がまだ豊かではなかった1960~1970年代、油は貴重で今のように気楽に使えるものではなかった。韓国人のソウルフードのひとつといえる中華料理、チャジャンミョンが今でも愛されているのは、貴重な油をつかったソースがたっぷりかかった麺を嬉々として食べた時代への郷愁もあるだろう。

 エビや鱈、牡蠣やズッキーニの揚げ焼きを旨い旨いと食べていた松重が指摘していたように、ジョンは素材の新鮮さと火加減が肝である。

 それをもっとも実感でき、なおかつヘルシーなのが、ホバクジョンだ。上手く焼かれたホバクジョンは薄い衣の中のズッキーニにちゃんと火が通りながらも、みずみずしさが残っていて、その甘味がなんとも言えない。ジョンの店にはかならずあるので、ぜひ試してもらいたい。

全州の韓式旅館の朝食に出てきたジョンの盛り合わせ(中央左)

●配信情報

Netflix『隣の国のグルメイト』独占配信中(毎週木曜日配信)

[2025年/全30話]出演:松重豊、ソン・シギョン