Netflix『隣の国のグルメイト』12話で歌手ソン・シギョンが松重豊を案内したソウル狎鴎亭エリアの「漢誠カルグクス」は、日本からの旅行者にはもちろん、酒と肴に目がない筆者(韓国生まれの韓国人)にとっても大変魅力的な店だった。
ソン・シギョンは、「店名には麺料理が冠されているが、この店は麺が主役ではない。カルグクスが美味しい店は他にいくらでもある」と言っていた。松重豊が「めちゃくちゃ美味しいじゃん」と言いながら食べていたものより、さらに旨い店がいっぱいあるというカルグクスとは、いったいどんな食べ物なのだろうか。
■『隣の国のグルメイト』に登場した麺料理、カルグクスとは?
カルグクス(カルククス)のカルは包丁、ククスは麺のこと。小麦粉を練ってのばして包丁で切った麺が、いりこ出汁のきいたあたたかいスープにつかって出てくる。
冷麺と並ぶ韓国を代表する麺料理だが、日本人にとっては冷麺と比べると影が薄い存在ではないだろうか。その理由として挙げられるのは、カルグクスが日本のうどんと似ていることだ。せっかく海外に行ったのだから、日本の食べ物に似たものは避けたいと思うのが人情だろう。
しかし、韓流エンタメブームで日本から韓国に行く層が広がると、そんな人ばかりではなくなってくる。この十数年間、韓国でもカフェなど西洋的洗練が進んだスポットが注目されるようになったように、韓国らしいものを求めて韓国に来る人ばかりではないというわけだ。辛くなく、日本の食べ物に近いものが重宝がられてもなんら不思議ではない。
筆者は25年前から、日本から韓国に来る取材チームのアテンドを行っているが、メンバーが5、6人いればそのうち1人か2人は辛い物が苦手な人がいる。そんな人のために、二日に一回はカルグクスやソルロンタンなど辛くないものが主菜の店を選ぶようにしていた。これがいいアクセントになったようで、辛い物が苦手な人にも、好きな人にも好評だった。


■ソウル明洞にあるカルグクスの超有名店「明洞餃子」
この十数年、韓国=ソウル、ソウル=明洞という認識が進んだため、明洞エリアにある飲食店がテレビなどで盛んにクローズアップされるようになった。そのひとつが、超有名店の「明洞餃子(ミョンドンギョジャ)」だ。今や日本のスマホ検索欄に「明洞」を入力すると予測変換で店名が出てくるまでになっている。
「明洞餃子」はカルグクスと餃子(マンドゥ)が看板料理で、カルグクスはスープに最初から麺を入れて煮込むため、とろみがあるのが特徴。ニンニクも効いている。鶏ひき肉やワンタンがのっていてボリューム満点だ。
カルグクスにはいくつか流派があるのだが、この店は忠清北道や、大邱など慶尚北道で食べられているものの流れを汲んでいる。
