韓流エンタメの推し活や休暇の旅行で韓国をたびたび訪れる場合、滞在中に使うカードや電子マネーはなにがいいだろうか。迷う人も多いだろう。

 韓国の代表的な公共交通カードのT-moneyカードは、地下鉄やバス、タクシーのほか、コンビニエンスストアでの支払いに使える。チャージは現金のウォンのみで、日本円は使えない。

 いっぽう、2022年にサービスが始まった外国人向けのカードのWOWPASS(ワウパス)は、T-moneyの機能に加えて、プリペイドカードとして、店でのカード決済にも対応している。クレジットカードや日本円の現金でもチャージできる。日本円からウォンへの両替が必要ないのだ。

■新たにWOWPASSをつくるか、従来のT-moneyカードとクレジットカードを併用するか……

 この原稿を書こうとしていた矢先、LINEの電話が鳴った。知人はソウル仁川国際空港にいた。

「いま空港のコンビニの前なんだけど、WOWPASSの機械の前がすごい列なんだ。30人以上いるかな。どう思う?」

 WOWPASSの機械は、その設置場所が増えていた。3ヵ月ほど前、僕が仁川国際空港に着いたとき、到着階のコンビニの近くにはWOWPASSの機械はなかった。空港鉄道の券売機の近くと案内された。到着階のコンビニ近くに新設されたようだった。

 知人の「どう思う?」の意味はよくわかった。ここでWOWPASSをつくるか、T-moneyカードをつくるか、どちらがいいと思う?……そういう質問だった。

 彼はWOWPASSつくろうとしていたようだった。いま、ネットで検索するとWOWPASSはすぐにヒットする。便利なカードだと書いている人が多い。それを見れば、誰しもWOWPASSに走る。しかし30人の列……。

 WOWPASSの情報は世界に流れているのだろう。多くの観光客が、空港から列車やバスで市内に向かうわけだから、そこで利用できるWOWPASSを空港でつくろうとする。

「今年、WOWPASSをつくったけど、パスポートを読み込ませたり、チャージしたり……で、ひとり10分ぐらいはかかる気がするな」

「じゃあ順番がまわってくるまで2時間?ちょっと考えるよ」

 そこでLINE電話は切れた。それから30分ほどしてLINEのメッセージが届いた。

『結局、コンビニのカウンターでT-moneyカード買いました。WOWPASSはあれだけ混んでいるとちょっとね。空港鉄道の券売機の機械でチャージして、いま列車のなか』

 結局T-moneyカードになってしまう感覚はよくわかった。実は3ヵ月前の僕もそうだった。ソウル到着当日はWOWPASSをつくるタイミングをはずし、翌日にはつくったが、地下鉄やバスに乗るときはT-moneyカードを使っていた。

 実際に使っていないので無責任なことはいえないが、WOWPASSは便利なカードだと思う。T-moneyカードとしても使え、日本円を機械に入れる形でチャージもできる。両替機能ももっているわけだ。10万ウォンぐらいチャージしておけば、食事の支払いも大丈夫だ。皆がつくろうとする気持ちはわかる。

 しかしこれまで、T-moneyカードとクレジットカードの併用で支払いをしてきた身としたら、新しいカードをつくるほど便利か……といったポイントで立ち止まってしまう。WOWPASSのうち、T-moneyカードの機能だけを使いたいのなら、わざわざつくる必要はない。

 旅先で新しいカードを勧められることは多い。そのときは、便利さに誘われてつくってしまうのだが、実際は使わないことが少なくない。僕も各国でつくったプリペイド系カードを何枚ももっているが、それぞれに残金がどのくらいあるのかわからなくなっている。最近では残金を知るアプリもあるが、それをインストールしなくてはならない。アプリがどんどん増えていってしまう。

 僕がアジアでいまでも使うのは、台湾の悠遊カード、香港のオクトパス、そして韓国のT-moneyカードだ。どれも老舗プリペイドカードで、10年以上の歴史がある。

 BTSのメンバーが登場したT-moneyカードの人気はすごかった。世界的大ヒット作のNetflix韓国ドラマイカゲーム』のヨンヒ人形がデザインされたT-moneyカードをもっている知人もいる。改札でタッチするとヨンヒの目が光るという。

WOWPASS。デザインはいたってシンプル。多くの店で支払いに使える
T-moneyカード。デザインはいろいろある。キャラクターつきのストラップなど関連商品もコンビニでは売られている