しかし経営的には不運を背負ってもいたようだ。親会社は全羅道を拠点にする韓国の財閥のひとつである錦湖アシアナグループである。この企業はさまざまな新規事業に手を出していったが、収益的には失敗するものも多く、中核企業であるアシアナ航空を売りに出すことを決めていく。そのとき、手を挙げたのは財閥である現代系企業や大宇系企業だった。ここで話が決まれば、アシアナ航空は存続したことになる。
ところがそこをコロナ禍が襲う。世界の航空会社は大幅な減収に追い込まれていく。それぞれの航空会社は、独自の企業努力でコロナ禍を乗り切ろうとしていくが、アシアナ航空の場合は、身売りの話のなかでのコロナ禍だった。買いとろうとする会社にしたら、先行きが見えないなかで、腰が引けていく。そしてこの身売り話は、2020年には白紙に戻ってしまうのだ。
アシアナ航空は行き場を失ってしまった。しかし身売りの話は生きているなかで、大韓航空がアシアナ航空を買収する流れが生まれてくる。競合する航空会社が統合していくということは大変なことだった。しかしこの話が進んでいく。
もしコロナ禍がなかったら、いま頃、アシアナ航空はなに食わぬ顔で世界の空を飛んでいたと思う。アシアナ航空はそういう星を背負っていたのだろうか。
しかし現実は冷酷に進む。アシアナ航空をよく使う僕にも、その波は打ち寄せるようになる。
