孤独のグルメ』の松重豊と韓国の人気バラード歌手ソン・シギョンが日本と韓国で食べ歩きするNetflixバラエティ番組『隣の国のグルメイト』シーズン2の第3話は、福岡で松重が子供のころから食べていたとんこつラーメン(博多ラーメン)をじっくり味わう回だった。

■『隣の国のグルメイト』に登場した松重豊が愛するとんこつラーメン、ソン・シギョンの反応は?

 松重豊とソン・シギョンがとんこつラーメンを食べる今回は、松重と同い年の筆者(埼玉県生まれ)にとっても、自身のとんこつラーメン史を振り返るいい機会になった。

 初めてとんこつラーメンを食べたのは1983年頃(当時20代前半)だったと記憶している。西麻布交差点の近くの六本木通り沿い。地図を見ると、今でも同じ場所にチェーンの博多ラーメン店があるが、昔と同じ店だろうか。

 ソンが、福岡にある老舗とんこつラーメン店の前で、「ボクはこの匂いが好きなんですけど、日本人でもこの匂い嫌いな人いますか?」と尋ね、松重が、「(たとえ福岡の人でも)この強烈な獣臭が苦手な人はいる」と答えたように、筆者も西麻布の店に入ったときは正直抵抗を感じた。1970年代後半から上板橋駅前の「大番」という店で醤油とんこつスープのラーメンは食べ慣れていたのだが、その店にここまで強烈な匂いは漂っていなかったからだ。

 しかし、スープをひと口飲み、をすすっていると抵抗感はなくなっていった。それでも「リピートはないな」という感想をもったのだが、なぜかその味をたまに思い出し、外出先でとんこつラーメンの店を見つけると積極的に入るようになっていた。

 韓国のエイ料理がそうであるように、台湾の臭豆腐がそうであるように、匂いが話題になりやすい料理と向き合って、その世界に没入すると、とりこになってしまう人は少なくないようだ。

福岡の有名店のとんこつラーメン

■韓国人にも、とんこつスープに抵抗を感じる人は多かった

「ウチの撮影スタッフの一人もこの匂いは無理かもと言いながら、食べたら美味しいと言っていた」と、ソンが話していたが、じつはとんこつスープに対する抵抗感は韓国人のほうが強いかもしれない。

 2000年前後に、東京に住む韓国の友人たちを何度かとんこつラーメンの店に連れて行ったことがあるのだが、匂いが無理という人が少なくなかった。韓国のとんこつスープ料理、テジクッパは今でこそソウルでも食べられるが、十数年ほど前までは釜山慶尚道の一部でしか食べないものだった。とんこつラーメンよりも臭みが消されているテジクッパであるにもかかわらずだ。