■スンデクッ店の流儀、まずは茹で肉で一杯
飲食店の魅力は、「味」「人」「雰囲気」だと筆者は考えているが、この店のスンデクッ(ネジャンクッ)の味は文句なしだった。「豚からこんな上品なスープがとれるとは……」。これは、前述の釜山の老舗で初めてテジクッパを食べたとき以来の感想だ。たっぷり盛られたエゴマの実(ドゥルケカル)も内臓のスープと相性抜群である。
韓国もそうだが、日本でも食材としての豚は牛の格下という意識が根強い。そんな人にこそ、この店で食べてもらいたい。
夏場は店先の簡易テーブルに陣取り、ソン・シギョンが頼んでいた茹でた内臓やカシラでソジュやマッコリを飲む。スンデクッの具でさらに飲み、残ったスープにごはんを投入してかき込むのが醍醐味だ。
松重豊はスンデクッのスープから博多のラーメンを連想し、麺を入れたくなったと言っていた。韓国でも南部、たとえば釜山のテジクッパの店ではご飯の代わりに麺(ククス)を入れるのはごくふつうなので、みなさんも試してみるとよいだろう。冷麺でなくても “先酒後麺”(ソンジュフミョン=肉で呑み、麺で〆る)は可能なのである。おすすめは、釜山北西部にある亀浦市場(クポシジャン)のクッパ横丁だ。

●配信情報
Netflix『隣の国のグルメイト』独占配信中(毎週木曜日配信)
[2025年/全30話]出演:松重豊、ソン・シギョン