ひと口に韓国ドラマというが、いったいどのくらいの作品があるのだろうか。日本で韓国ドラマの配信数が最も多いといわれるU-NEXTがこれまでに扱ったドラマは、1830本以上といわれる。この本数の多さに支えられて、韓国ドラマの聖地巡りという旅のスタイルが生まれた。ロケ地を訪ねる旅である。

■韓国ドラマの聖地巡りにおすすめ!ソウルの人気ロケ地に設置された「SOUL SPOT」

 韓国の地方を舞台にしたドラマも多くなっているが、やはりソウルやその近郊を中心に聖地巡りを楽しむ人が多いようだ、訪ねやすさということもあるのだろうが、制作会社にしても地方のロケというのは経費がかさむ。ソウルで適した場所があればそこで撮影するだろう。

 韓国の人口分布はやや特異で、全人口の半分近くが、ソウルを中心にした首都圏に集まっている。当然、政治や経済、文化の密度も高くなる。地名にしても、ソウル市内の地名は日本でも知られていて、ロケ地も皆がすぐわかる場所が多い。聖地巡りがソウルやその近郊に集まる理由のような気もする。

 しかしそれ以上に、韓国ドラマには、ソウルのエリアそのものを題材にしたものが少なくない。『梨泰院クラス』はその代表格だろうか。梨泰院というエリアがドラマのベースになっている。ソウルに詳しくない人も、ドラマを見つづけるなかで梨泰院というエリアを知っていく。

 仁川国際空港を舞台にしたドラマを観ると、国際空港というより、仁川国際空港そのものが前面に出てくる。日本で空港を舞台にしたドラマをつくっても、羽田や成田の空港を、ここまではっきりと出さないように思う。その意味では、韓国ドラマというのは、ソウルのリージョナルドラマの要素を備えている気がする。韓国ドラマの一部は、ソウルを媒介に聖地巡りという旅とうまくリンクしているように思えるのだ。

 韓国ドラマとソウルの親和性──。ソウル市がそれに気づいたのか、ようやくプロジェクトとして実現させられたのかはわからないが、人気韓国ドラマのロケ地を「SOUL SPOT」と命名し、そこにサインボードを設置したという。サインボードにはQRコードがあり、読み込むと、そこでロケが行われたドラマの解説が聴けるという。日本語もあるようだった。

 サインボードがあるという世運橋(セウンギョ)に行ってみることにした。場所は明洞からそう遠くない。天気がいい日だった。整備された清渓川(チョンゲチョン)沿いの遊歩道を散歩気分で歩いた。歩道に沿って地図もある。世運橋には15分ほどで着いた。

 世運橋は橋というより、両側に広がる商店街をつなぐ広場のようなつくりだった。そこに立つと、両側にビルが建っていた。広場でサインボードを探したがみつからず、上階にのぼってみた。そこも商店街をつなぐ通路になっていた。ぼんやりとベンチに座るおじさんにサインボードの場所を訊いてみた。「知らない」という。広場を見下ろすと、そこに欧米人のグループがふた組いた。ビルをバックに写真を撮っている。

 聖地巡り? 広場に再び降り、サインボードを探した。

「これだったのか」。世運橋と刻まれた石盤の右下隅に、縦横20センチほどのパネルが貼りつけられていた。そこにQRコードもある。その小ささに少し拍子抜けしてしまった。

世運橋のサインボード。右下にあるのがそれ。みつけるのに苦労する