スマホでQRコードを読みとった。『ヴィンチェンツォ』という韓国ドラマの説明だった。日本語を選んだ。 世運橋上のベンチに座り、つい聞き入ってしまった。
世運橋はかつてはソウルを代表する家電商品の商店街だったようだ。この橋に着いたとき、サインボードを探して周辺の商店街を歩いた。電気部品を並べた店が多い。
観光客には縁のなさそうな街だったが、付近のビルの再開発をテーマにしたドラマ『ヴィンチェンツォ』のロケがここで行われた。イタリアマフィアの弁護士である韓国系イタリア人(ソン・ジュンギ)は、商店街のビルを壊すことを目的にやってくるのだが、やがて住民と一緒に巨大企業と腐敗した権力に立ち向かっていくというストーリーだ。
スマホから流れる「ここで販売される部品を集めればロケットだって打ちあげられる」という説明が興味深かった。広場にいた欧米人グループは、きっとそのドラマを観たのだろう。
僕は『ヴィンチェンツォ』というドラマを観てはいなかった。帰国後、Netflixで観はじめた。
「おおーッ、あのビルだ」
世運橋で目にした風景が画面に広がった。一気にドラマに入っていってしまった。
その姿を脇で見ていた娘がこういった。
「『涙の女王』のロケ地も近くじゃない?」
娘はしばらく前、『涙の女王』にはまっていた。ソウルと韓国ドラマの距離は近い。
