Netflix配信の日韓グルメ番組『隣の国のグルメイト』シーズン2「究極の味対決」第7話では、歌手ソン・シギョンが『孤独のグルメ』の松重豊を漢江(ハンガン)の盤浦大橋たもとの公園に案内した。

 そこでソン・シギョンが、「コンビニで買ったインスタントラーメンを、漢江を見ながら食べるのが韓国人の楽しみなんです」と言うと、松重豊が「うん?」と、ややとまどったようなリアクションを見せたことに気づいた人は多いだろう。

■韓国人のラーメン情緒、『隣の国のグルメイト』に登場した「漢江」ラーメンの魅力とは?

 日本と韓国はメンタリティや生活様式に共通点が多いが、同時に相違点も多い。インスタントラーメン観もそのひとつだ。

 コンビニの専用調理器でラーメンをつくるソン・シギョンを見て、松重豊が思わず「カップラーメンでいいじゃん」と言った気持ちは、筆者も日本人なのでよくわかる。ソン・シギョンの「カップラーメンはおやつみたいな感じだけど、袋入りのラーメンはちゃんとした食事」という説明にも、松重豊は「そうなんだ……」と釈然としない様子だった。

コンビニのインスタントラーメン専用調理器

 筆者は1990年代前半、韓国の友人と南大門市場屋台でラーメンを食べたとき、韓国の外食ラーメンが袋を茹でて卵を落としただけと知って、「家で食べてもいっしょじゃん」と友人に言ってしまったことがある。しかし、屋台の主人や友人に「家とは火力が違うし、麺をちょうどよく茹でるのにもコツが要るんだ」と返され、返事に窮してしまった。

 日本も韓国もインスタントラーメンが普及したのは1960年代なのだが、同じ時代でも国情には大きな違いがある。日本は高度成長の真っただ中。韓国は1953年の朝鮮戦争休戦後、世界最貧国のひとつで、復興途中だった。世代にもよるだろうが、インスタントラーメンをありがたがる気持ちは韓国のほうがはるかに上だったろう。

 今はレトロブームということもあり、食うや食わずの時代を懐かしがる気持ちも加わって、ラーメンに情緒を感じる人が多いのかもしれない。

田舎のバスターミナルの軽食店で食べたインスタントラーメン