ソウルで24時間営業の店が一気に増えたのは、2024年の後半のことだったように思う。その年の7月、政府の最低賃金委員会は2025年の最低賃金を発表した。その額は時給1万30ウォン(約1103円/当時)。コロナ禍明け後の物価高に対応したものだったが、日本の最低賃金より高くなったことで話題になった。
高い人件費……。経営者はその対応策を考え、無人店の発想に傾いていった。マシンを使った無人ラーメン店は話題になった。無人カフェや無人帽子店なども登場した。
無人店ということなら、当然、24時間営業になびいていく。ソウルの繁華街には終日営業の韓国料理店をたまに目にしたが、その数は少なかった。そのなかで無人店の24時間カフェが次々に開店していった。店内には何台もの防犯カメラが設置されていたが。
しかし韓国人の知人に訊くと、その後の展開は、ソウルのなかでも地域差があるという。24時間カフェというより、無人カフェのなかには閉店したところも多いという。理由は単純で、無人カフェのコーヒーは、有人のテイクアウト専門店より高かったからだ。賃料とマシンのリース代などを考慮した結果だという。高い物価対策にはならなかったわけだ。
「無人店はコーヒーができるまで時間がかかるというのも浸透しなかった一因。コーヒー店は朝やランチ後、一気にお客さんがやってくる。有人店はそれを店員がさばいていく。でも、無人店はマシンの前に列をつくるしかない。実際にかかる時間は同じでも、マシンの前では苛ついてしまう。サラリーマンたちが嫌った理由だと聞きました」
知人と共同で無人カフェを計画し、結局は諦めた知人が説明してくれた。
先日、以前に1回使った明洞の無人カフェの前を通りかかった。24時間営業のカフェだったが、すでに有人のクレープ屋になっていた。夜10時までの営業だった。
しかし江南で昨年入った24時間営業の無人カフェは健在だった。江南は人気エリアだから賃料も安くないはず。24時間薬局や24時間カフェ。江南はソウルのなかで眠らない街に向かっている?
