孤独のグルメ』の松重豊と韓国の人気バラード歌手ソン・シギョンが日本と韓国で食べ歩きするNetflix隣の国のグルメイト』。シーズン2「究極の味対決」第8話は、松重豊がソン・シギョンを京都の高級和栗専門店に案内。モンブランやかき氷などを楽しんだ。

■食材の産地を積極的に謳う日本の食文化、韓国との違いは?

 日本の人でも京都の飲食店に入るとなると、ちょっとかまえたり、緊張したりすると聞いた。かつては政治や文化の中心だったからだろうか? 京都人は自尊心が強く、排他的だからという話も聞いたことがある。外国人が “日本通” を気取るなら、京都に精通していなければならないという圧を日本の人との会話の中から感じることも少なくない。ソウル在住の筆者も機会の多い名古屋や大阪出張のついでにちょくちょく京都に寄りたいと思っているのだが、まだ一度しか実現していない。

筆者が訪れた京都鴨川の納涼床

『隣の国のグルメイト』に登場した和栗専門店は出てくる食べ物はもちろん、調理と接客を担当する人からも京都を、日本を強く感じた。韓国ではグルメ志向が庶民にまで浸透したのがこの20年くらいなので日本の飲食文化の奥深さには敬服することが多い。

 モンブランに使われる京都の丹波栗、宮崎のえびの市の栗。かき氷に使われる宇治抹茶、山形県産ブルーベリー。ワインは丹波産のスパークリング……。食材ひとつひとつに産地が誇らしげに謳われているのはいかにも日本という気がする。

『隣の国のグルメイト』の和栗専門店で栗あんが押し出される映像を見て、多くの韓国人が冷麺を思い出した。写真は冷麺の製

 筆者は本の取材のために、2005年から韓国全土のマッコリ飲み歩きを始めた。マッコリという酒の地域ごとの情緒性というものは感じられたが、原料とか製法など酒そのものの個性は乏しいと思った。日本では筆者が留学していた1990年代半ば、すでにどこの居酒屋に行っても各地の日本酒や焼酎が楽しめた。その土地の産物と風土が育んだ地酒というものが多様に発達している印象だった。

 韓国でマッコリブームが起きたのが2009年。それ以降、伝統酒が見直され、日本に追いつけとばかりに、自治体が地酒をアピールし始めたり、ソウルや釜山の飲食店でも地方の酒が飲めたりするようになった。今では、ソウルの中心部はもちろん、筆者が住む下町にもマッコリ、焼酎、清酒などが楽しめるボトルショップができている。