遠くない昔、つまり1990年代以前の韓国を背景にしたドラマや映画は、物語だけでなく、いかにその時代の空気が再現されているかも見ものだ。
最近のドラマなら、リュ・スンリョン主演『パイン ならず者たち』、IU&パク・ボゴム主演『おつかれさま』、キム・ソヨン主演『貞淑なお仕事』。映画なら、イ・ソンギュン主演『大統領暗殺裁判 16日間の真実』、ソン・ジュンギ主演『ボゴタ:彷徨いの地』、ファン・ジョンミン主演『ソウルの春』、キム・ヘス主演『密輸 1970』などもそれが見せ場のひとつだった。
■Netflix『エマ』で長髪とフレームの大きな眼鏡で1980年代を再現したチョ・ヒョンチョル、『D.P. -脱走兵追跡官-』脱走兵役で注目を集めた俳優兼監督
時代の空気を再現するのにもっとも有力なのがCGとAIだろう。今の技術なら当時の写真や動画をもとに実像がないものをいくらでもつくることができる。また、実写では自動車や服、メークなども重要だ。
しかし、もっと大事なのがその時代の人間のたたずまいを再現する俳優だろう。
1980年代を舞台にしたドラマ『エマ』でいうと、映画会社社長(チン・ソンギュ)と女優(イ・ハニ)の板挟みで苦悩する新人映画監督を演じたチョ・ヒョンチョル(1986年生まれ)が功労者だ。
肩まである長髪と小鼻にふれるほど大きなフレーム、そして遊びのない言葉づかいで、みごとに1980年代の純情青年を演じて見せた。
気づいていない人が多いらしいが、チョ・ヒョンチョルはチョン・ヘイン主演ドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン1の6話で先輩にいじめられて脱走し、凶行に及んだチョ・ソッポン一等兵を演じた俳優だ。その迫真溢れる演技は、第58回「百想芸術大賞 」TV部門の男優助演賞を受賞するなど、高い評価を受けた。前出の『ボゴタ:彷徨いの地』にも出演している。
『エマ』では映画監督を演じたチョ・ヒョンチョルだが、西江大学中退後、韓国芸術総合学校で学び、短編映画を10本以上撮っている正真正銘の映画監督でもある。
