豪華キャストで話題のドラマ『パイン ならず者たち』は、全羅南道の西側の海に眠る財宝を狙う者たちの群像劇だ。それは財宝をせしめようとする者だけで10人を超えるキャラクターが跋扈する魑魅魍魎の世界だった。今回は特に印象に残った俳優にスポットを当てる。

■『パイン ならず者たち』注目すべき俳優は?

■金と男を支配せんとする毒婦役、イム・スジョン(1979年生まれ)

 財産目当てで資産家(チャン・グァン)の妻になったり、支援をちらつかせて医師を翻弄したり、欲しいものを手にして歓喜の舞いを見せたりする一方、窮地に陥ると男に秋波を送ってみたり……。物語の後半は彼女を中心に展開されたと言っていい。

 イム・スジョンが20代のときに主演した映画『角砂糖』、『サイボーグでも大丈夫』(チョン・ジフンと共演)、『ハピネス』(ファン・ジョンミンと共演)で流した涙を返してくれ! と言いたくなるほどの毒婦ぶりだったが、その醜悪さと美貌が絶妙なバランスを保っていて、多くの出演者のなかでもギラッと光って見えたことは否定できない。

■侠気と純情を兼備した青年を好演、ヤン・セジョン(1992年生まれ)

 ヤン・セジョンは不思議な俳優である。

 二枚目然としているときはどこかコ・ンユに似ている。本作ではやや増量して、1970年代の空気をまとっていた。

 一方、悪事と木浦の茶房アガシ(キム・ミン)の板挟みになり、苦悩する姿は香港の俳優レスリー・チャン(1956年~2003年)を彷彿とさせた。

 レスリー・チャンと言っても、映画『チャンシルさんには福が多いね』で短パン&ランニング姿のキム・ヨンミンが演じた幽霊のことではない。1980年代から1990年代、『男たちの挽歌』『欲望の翼』『さらば、わが愛/覇王別姫』『ブエノスアイレス』などに主演した香港映画界の伝説的俳優、張國榮(韓国読みでチャン・グギョン)のことだ。

 2000年代に韓流スターにハマった女性には、レスリー・チャンやトニー・レオン、アンディ・ラウ、レオン・ライなど香港俳優ファンからの移行組が多いと聞く。本作のヤン・セジョンを見て、レスリー・チャンを思い出し、ハッとした人も多いのではないだろうか。

『パイン ならず者たち』の背景である1970年代の庶民の生活圏を再現した水道局山タルトンネ博物館(仁川)