物価がじりじりとあがるソウル。人々の暮らしは楽ではない。そのなかで増えているのが、食べ放題系の店だ。韓食ビュッフェや韓食バイキングと呼ばれる。ビジネス街で増えているのが、ランチタイムのコスパバイキング。料金は8000ウォンから1万ウォン。日本円で千円前後の食べ放題店だ。
■ソウルに増えている韓食ビュッフェ、ビジネス街のランチ需要だけではなかった
この種の店は、食べ放題を謳っているところは少ない。本来は夜が主体の居酒屋系の店だ。店名もそのままで昼のコスパバイキングをはじめている。
理由はやはり物価高。食材の価格があがり、夜の営業だけでは苦しくなってきている。そんな店が、少しでも収益を増やそうと昼にも店を開け、人件費が抑えられるパイキング形式にしている。サラリーマンの間では、
「○○がコスパバイキングをはじめたらしいよ」
という噂が広まる。ソウルのビジネス街で起きている現象だ。
しかしソウルの鐘路(チョンノ)にある韓食ビュッフェの店を訪ねると、そこには別の世界が広がっていた。席は老人たちで埋まっていたのだ。
物価高は老人たちの生活も圧迫している。安い食べ放題店に彼らが集まる。鐘路はもともとシニアが多い街だった。物価高に高齢化が重なったわけだ。
アジアの国々も高齢化が進んでいる。日本同様、高齢者支援を行政も急いでいる。
中国の社区食堂もそのひとつだ。公共の建物を改装し、老人向けの食堂をつくっていった。もともと公共の建物だから、賃貸料はかからない。価格を抑えることができた。食べ放題ではなく、トレーに入った10種を超える料理から、それぞれを皿に盛ってもらうスタイル。栄養バランスなど高齢者への配慮もある。
しかし大都市の社区食堂では別の問題が噴出してしまう。仕事がない若者が社区食堂を埋めるようになってしまったのだ。上海などでは、昼の時間帯は若者の入店を制限する事態も起きている。
鐘路の店は看板に、「Korean Food Buffet」という英語も書かれていた。観光客も意識している? 店主に訊くと、「たまに外国人もくるけど……」と笑うだけだったが。
トレーに並ぶ料理を眺めてみる。どれが韓国料理なのだろうか、と悩む。味だろうか。僕の韓国料理の知識では、なかなかわけ入ることができない。
同行してくれた韓国人の知人が、「これなんかは……」と教えてくれたのはキノコ料理だった。たしかにキノコ尽くしの料理で日本では目にしない。皿にとってひと口食べてみた。ショウガと辛みが効いている。たしかに韓国っぽい味だ。しかし知人に訊いても、料理名はすぐに思いつかないようだった。この店オリジナル、ということなのだろうか。
ビュッフェとしたら有名店だから、どんな料理に人気が集まるのか、といった経験でメニューが決まってくるのだろう。しかし、どこか節操がないようにも映る。その代表がフレンチトーストだった。この店は自販機のコーヒーもあるから、朝食? と考えてみるのだが、隣にいた老人の皿を見ると、ご飯、おかずの横に、しっかりとフレンチトーストが載っている。
「週に2回ほど仲間ときます。ひとり暮らしですが、毎日自炊ですよ。年金生活者にとって食堂は高いから。でもここなら大丈夫。フレンチトースト? ご飯と一緒にたべるのは変だと思うけど、目が食べたくなっちゃうんですよ。家じゃなかなかつくらないでしょ」