■ソンジェが大会向けの料理に必要だと言ったフュージョンとは?

 メニューに悩んだソンジェが言った「(高級志向のライバルに勝つには)フュージョンの要素を加味する必要がある」のフュージョンとは、筆者のような50代の韓国人には懐かしい言葉だ。

 1990年代後半、韓国ではフュージョン料理という言葉が流行した。韓食、洋食、中華、和食といったジャンルを飛び越えた創作料理のようなニュアンスである。ソンジェが作ったカルグクス麺のパスタもその例だ。

 当時、筆者の周りには混じりっけなしの韓国料理のダイナミズムを称賛する日本人旅行者が多かった。そのため、変に異国風アレンジを加えたフュージョン料理は彼らには評判がよくなかった。今思うと、韓国料理が見当違いの背伸びをしていたように見えて少々くすぐったい。

 今の韓国は、外国料理は外国料理として再現性を高め、韓国料理は韓国料理として本来の魅力を極めようとしている気がする。ここ数年脚光を浴びているクラシックな平壌冷麺はその象徴と言えるだろう。

カルグクスはカル(刃物)で切ったククス(麺)のこと
ソウルの老舗の平壌冷麺

■「4500ウォンの幸福」で思い出される「100ウォンの行楽」

 軍給食料理大会の開始に先立ち、司会者が言った「(一食当たりの食費)は4500ウォン。本大会は『4500ウォンの幸福』をテーマとする」に、1960年代のソウルで流行った言葉「100ウォンの行楽」を思い出した。

 朝鮮戦争の休戦から十余年。どん底から這い上がりつつあった我が国の首都ソウルでは、日曜日にささやかな余暇を楽しめるようになってきた。「100ウォンの行楽」とは、5ウォンの電車賃でソウル中心部に出かけ、古宮・昌徳宮辺りを散歩し、60ウォンのプルコギと35ウォンの平壌冷麺を食べることだったのだ。

●配信情報

『伝説のキッチン・ソルジャー』ディズニープラスにて独占配信中

[2026年/全12話]演出:チョ・ナムヒョン 脚本:チェ・リョン

出演:パク・ジフン、ユン・ギョンホ、ハン・ドンヒ、イ・ホンネ、イ・サンイアン・ギルガン

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