Netflix話題作『エージェント・キム: リアクティべーティッド』は、ソ・ジソブ扮する元特殊工作員キムの寡黙なキャラと、彼の周辺の人間味のあるキャラのコントラストがじつにおもしろい。派手なアクションやポリティカル・サスペンスとしての物語展開だけでなく、登場人物のちょっとした表情演技にも見るべきものが多い。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『エージェント・キム』主人公三人組とサンアの心が通じ合った瞬間
第9話にもそんなシーンが多かった。再びチュハク建設会長(チュ・サンウク)を拘束したキム、ジンチョル(ユン・ギョンホ)、ハンス(チェ・デフン)の三人組と特任局のサンア(ソン・ナウン)。
韓国と北朝鮮の南北会談が行われているホテルのエレベーターの中。後ろから拳銃を突き付けられていて身動きできない会長に、ハンスが嫌味を言う。
「後ろ暗いところがある奴に限って、逃げ道だけはしっかり確保していやがる」
「エイグ(まったく)」という感嘆詞で同調するジンチョル。ハンスも「エイグ」と続ける。
そこに、常に冷静さを求められ私情を挟むべきでない特任局のサンアまで、「アヒュ」とため息をもらす。
意外そうにサンアを振り返るジンチョルとハンス。自分たちを監視する立場の特任局とは微妙な関係の二人だが、共通の敵を前に三人の心が通じ合った瞬間だ。
それを見たキムまでがニヤリとする。
抑制の効いたこのシーンがあったからこそ、そのあと、ジンチョルとサンアがホテルの給仕係に化け、北朝鮮のSPたちがうじゃうじゃいる廊下をニコニコしながら歩くシーンが痛快なのだ。
このドラマが韓国SBS局で高視聴率を維持し続け、Netflix配信を通じて世界でもヒットしている理由のひとつに、こうした繊細な心理描写と大味なコミカル演出のメリハリがあるだろう。
■ハンスのテコンドーは実戦向き?
ハンスはテコンドー(跆拳道)の達人だ。テコンドーは日本ではかつて韓国空手と呼ばれていた打撃系格闘技で、1988年のソウル五輪、1992年のバルセロナ五輪で公開種目になり、2000年のシドニー五輪以降、正式種目となって今に至っている。ハンスはそこで金メダルを獲ったという設定だ。
日本の空手や中国拳法をさしおいてテコンドーが五輪競技になったのにはさまざまな理由が考えられるが、防具を使うので安全性が高いこと、ポイント制で競技化しやすかったこと、空手や拳法のように流派(派閥)が複雑ではなく一本化しやすかったことなどが挙げられるだろう。