アシアナ航空専属のCMモデルは、韓国ドラマの世界では、有名女優への登竜門とまでいわれるようになる。『結婚作詞 離婚作曲』のパク・チュミは2代専属モデル、『太陽を抱く月』のハン・ガインは4代専属モデル、『いとしのソヨン』のイ・ボヨンは5代の専属モデルである。

 そんな時代を知っている韓国のシニア層にとって、アシアナ航空が大韓航空に吸収されていくことへの思いは複雑だ。

「寂しいですよね。あの時代を知っている身にしたら。世界はいま保守的な傾向になってきているでしょ。韓国も同じ流れかなって。海外に行くときは、できるだけアシアナ航空を使いましたね。勤めていた会社も、その意識があって、大韓航空で出張とはとてもいえなかったなぁ」

 すでにリタイアしたLさん(68)は感慨深げに語る。

 しかしそんな思いを抱いているのはシニアの一部のようだった。若者から中年といった年代の人にはアシアナ航空へのこだわりは薄い。

 ある30歳台の男性はこんな感想を抱いていた。

「大韓航空とアシアナ航空が一緒になって、巨大航空会社ができあがる。テレビでいっていたけど、日本航空や全日空より大きくなるって聞いたとき、ちょっとうれしかった」

 統合はナショナリズムを刺激しているということか。その話を前出のLさんに振ってみた。

「そう聞くとたしかにちょっとうれしい。そういえば、オリンピックも名古屋に競り勝ってソウルに決まった。あのときの高揚感を思い出すね」

 しかし統合後の大韓航空の前途はそう甘くないらしい。旅行会社に勤めるPさんはこう分析する。

「直近の問題でいえば、スターアライアンスからの脱退がどういう結果を生むかですね。アジアではスターアライアンスが圧倒的に強い。たとえば、アジアからアメリカに向かうとき、スターアライアンスに加盟する航空会社のプログラムにマイルを貯めている人がアシアナ航空を利用した。その人たちを手放すことになってしまう。そこを狙う航空会社も出てくるはずです。スターアライアンスに属する全日空は追い風ってとらえている気がしますね。

 仁川国際空港はアジア一のハブ空港をめざしているけど、そのマイナス材料になる。将来的には韓国内での価格競争がなくなることが、運賃にどう影響するか……」

 いくつかの思惑を乗せながら、統合は着実に進んでいる。