■北欧神話の主神・オーディンの神馬が鎌倉に降臨!?

オーディンを背中に乗せた神馬・スレイプニル。2本ずつ足を括られていてちょっと窮屈そうな表情?/Wikimedia Commonsより

 まずは二代鎌倉殿・源頼家の時代、建久4年(1193)7月。淡路国(現在の兵庫県)で「異形の馬」が発見され、鎌倉殿に献上された。何が異形かって「前足が5本、後足が4本」で都合9本の足を持つという化け物。

 8本足の馬ならば、有名なのが北欧神話の主神・オーディンが乗っていた神馬「スレイプニル」。天翔ける最高の軍馬だそうだが、こちらの「異形の馬」は空を飛ぶでもなく、大人しくトコトコと鎌倉まで引き連れられてきた様子。

 とはいえ珍獣中の珍獣。「こんな瑞獣は手元に置いておいてはいけない。自然に放せば益々幕府は栄えるだろう」ということで、陸奥国外浜(そとがはま/現在の青森県津軽半島あたり)に放されることに(ていのいい厄介払いの気もしないではない)。そして、これが悲劇を生む原因になった……。

■「面倒くせえから……」神馬も殺す鎌倉武士が一番ヤバい

鎌倉武士といえば弓。だから神馬だろうが邪魔くさけりゃ射殺!

写真はイメージ(歌川芳虎「八島大合戦」/Wikimedia Commonsより)

 ここ最近は「鎌倉武士ヤバい。粗暴&狂暴」というのが知れ渡ってきているが、この鎌倉版スレイプニル(?)も、この粗暴な鎌倉武士の犠牲となった。なんと陸奥国へ送り届けるはずだった男が「面倒くせえなぁ」と途中で異形の馬を射殺!

 そのままトンズラした“神馬殺し”は翌建久5年6月に捕まるものの、その後、どういう刑が下ったのかは『吾妻鏡』には記されていない。面倒臭いならそのまま放り出せばいいものを、殺してしまうのが鎌倉武士の面目躍如というところ?