メニューボードに視線を走らせる。
6000ウォンの料理をみつけた。少し安い。メニューに併記された英文には、noodleやbean sauceの文字。想像力を働かせる。
これはチャジャンミョンではないか。この料理は、麺の上に黒味噌をベースにしたソースを載せる。ソウル駅のフードコートは、料理番号を伝えることで注文できる。その番号を口にして、
「チャジャンミョン?」
と訊いてみた。カウンターにいた中年女性は、頬を緩めて頷いた。
チャジャンミョンが安かった。うどんよりボリュームがある気がするが、1500ウォンも安い。
それ以来、街を歩きながら、チャジャンミョンの値段をチェックすることになる。この麺は韓国系中国料理店の定番料理である。店頭のメニューには漢字や英語が書かれていることが多く、みつけやすいのだ。
確認したのは5~6軒だろうか。そのすべてが、まるで申し合わせたように6000ウォンだった。
8年ほど前、韓国でチャジャンミョンを食べ歩いたことがある。当時のメモを見ると、4000ウォンから5000ウォンだった。韓国の物価上昇を考えると、チャジャンミョンは健闘していた。安い料金で頑張っていてくれたのだ。具材に豪華なものはなにもないから、高い料金をとれないのかもしれないが、庶民の味方の位置をしっかりとキープしていた。それに比べれば、うどんは……。
それから3日間、僕の昼はいつもチャジャンミョンだった。8年前も同じようなことをしていた。そして僕は漬物のたくわんに辿り着いていく。次回はそんな話をしてみようと思う。
(つづく)