■チャジャンミョンが歩んできた大衆料理の道

 僕のなかでチャジャンミョンに存在感が増してきたのは8年ほど前である。仁川にあるチャジャンミョンの博物館を訪ねてからだ。

 チャジャンミョンのルーツは、中国料理の炸醤麺(ジャージアンミエン)である。挽き肉にタケノコやシイタケなどを加え、豆鼓(トウチ/中国味噌)を加えて炒めた具を麺の上に載せる料理だ。そこに韓国風アレンジが加わる。タケノコやシイタケはタマネギに変わり、チャジャンという韓国風味噌にキャラメル味を加えて具を炒める。

 こうしてつくられたチャジャンミョンは一気に大衆料理の道を駆けのぼる。以前、韓国の家庭では、子供が小学校を卒業した日、お祝いで家族で食べる料理……そこにチャジャンミョンが入り込む。辛くないから子供の好物でもあった。

「韓国が高度経済成長を迎えたときの料理ですよ。漢江の奇跡といわれた時代。その時代に寄り添った料理なんです」

 チャジャンメン博物館には食堂のテーブルを家族4人で囲む様子が再現されていた。卒業式の後だから正装である。そしてテーブルにはチャジャンミョン……。

 僕はすっかりチャジャンミョンを気に入ってしまった。前にも増して、この麺料理を食べることが多くなった。

 毎日のようにチャジャンミョンを食べ歩いていると、当然、必ずその脇に置かれるたくあんが気になってくる。韓国料理は、メイン料理のほかに、何種類かの小皿が並ぶ。しかしチャジャンミョンは、その安さも理由のひとつかもしれないが、小皿はたくあんと決まっていた。ときにキムチがつくこともあったが。

 チャジャンミョンにはいろいろなバリエーションが生まれていたが、小皿はたくあんからぶれることはなかった。

 なぜ、たくあん……。

 次回はたくあんをめぐる韓国と日本の物語を。

(つづく)

●チャジャンミョン博物館(ジャージャー麺博物館/짜장면박물관)

住所:仁川広域市中区チャイナタウン路56-14

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