■裏慶州21時、4年前に出逢ったバーは健在だった

 目当てのビアバーは4年前と変わらぬ姿でそこにあった。訪韓できなかった3年間で心にぽっかりと空いた穴が埋められたようにうれしかった。この店は観光エリアにあったらそんなに注目しなかったが、慶州の人々の生活圏にぽつんとあるところが気に入ったのだ。私はこの辺りを勝手に裏慶州と呼んでいる。4年前はこの店のすぐ近くに東海南部線の線路があり、その下をくぐる車道があった。そこを映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』のヒョン(パク・ヘイル)のようにレンタル自転車を借りて、猛スピードで下ったのはいい思い出だ。しかし、車道は廃線ともに埋められてしまっていた。

 この夜、ビアバーのカウンターでは30代くらいのカップルと20代くらいの常連女性が飲んでいた。田舎町の酒場のよいところは、我々が外国人とわかると、躊躇せず話しかけてくれるところだ。

 どこの国のものだかも忘れてしまったビールや、同じ銘柄で度数の違うビールを3人で飲み、カウンターの若者たちと雑談しているうちに、2時間はあっというまに過ぎた。遠ざかっていた慶州を奪還したような満たされた気持ちでホテルに帰る。

2019年の夏、チョン・ウンスク(写真右)の文庫『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』取材で偶然見つけたビアバー「weekend common」。土日のみ営業。当初は京畿道に住んでいるオーナー夫婦のどちらかが通いで切り盛りしていたが、最近は慶州在住の女性がヘルプに入ることも
「weekend common」の外観。周囲は食料雑貨店やコンビニ、チキン屋など低層階の建物ばかりで、古墳も視野に入らない
今回、「weekend common」にいっしょに行った若者と常連の女性。彼女は我々がホテルに帰るタクシーを拾えないのを見て、スマホでカカオタクシーを呼んでくれた。バーの向かいには小さな食料雑貨店(シュポ)があり、日本の角打ちのように気軽に飲める
「weekend common」とシュポに挟まれた路地に入ると、左手に沐浴湯(銭湯)の設備をそのまま生かしたバー「オジェ・アレ」がある。手前の入口が女湯、奥が男湯
「オジェ・アレ」の店内。浴槽や洗い場がそのままテーブル席になっている