注文すると、店員の中年女性からこういわれた。
「今日はチョゲククスの注文が多くて。凍らせたスープストックを解かす時間がなくて。いつもより凍ったスープが多くなってしまうけでいいですか」
「ゆっくり食べれば解けていくってこと?」
「そうみたい……」
間もなくテーブルに置かれたチョゲククスは、大きなかき氷のようだった。鶏肉は見えるが、麺は氷の下に隠れている。
先にコンククスに箸を入れた。冷たい豆乳のなかに麺があるようなイメージでいたが、スープは大豆をすり潰した感が残っている。とろりというより、少し舌に引っかかる感覚。たしかにこのほうが冷たさ感が増すような気がする。スープはほんのりと味つけされていた。豆のスープを麺にからめるようにして口に運ぶ。味わいがある。大豆の香りが口中に広がる。なかなかのレベルだ。
氷が解けきるのを待ちきれずにチョゲククスに箸を入れる。上の方は氷だが、下は冷たいスープ。その麺を箸で挟む。やや塩味が強い気がしたが、氷が解けきるとバランスがとれるのかもしれない。酢の酸味が爽快で、つるつると麺が入っていく。
酷暑で減退した食欲をなんとか……と生まれた麺だという。もともとは現在の北朝鮮エリアで食べられていたという。日本の冷やし中華に比べると、脂感がほとんどないから、さっぱりと収まっていく。夏の麺としたら、僕はどうしてもこちらに軍配をあげてしまう。
チョゲククス、コンククス……。僕はチョゲククス派だと思った。コンククスはやや重い。チョゲククスの爽快感にはかなわない。
やはり韓国の夏はチョゲククス……。