韓国チョゲククスをはじめて食べたのはいつ頃だったろうか。やはり暑い日だった。ソウルの地下鉄の鐘路3街駅に近い食堂だった記憶がある。

 ひと口啜ったとき、「これだな」と思った。鶏の冷たいスープは酸味と甘みが心地いい。その上に鶏肉、キュウリ。上に白ごまがふりかけてある。の上には氷もざくざくと載っている。麺はやや細いうどんのような麺。韓国のククスではよく使われている麺だ。

■暑いときに食べたい韓国の麺料理、チョゲククスとコンククス

 チョゲククスは冷麺よりはるかにコクがあった。日本で夏に食べる冷やし中華よりさっぱりしている。それでいて深みがある。

「チョが酢、ゲがカラシっていう意味。そこにカラシがあるでしょ。もっとカラシ味を強くしたかったら入れてください」

 同行したソウル在住の知人が伝えてくれた。カラシは僕の好物でもある。

「このチョゲククスって、日本人の舌に合うみたい。ソウルに住む日本人から、チョゲククスが好きっていう話、よく聞きますから」

 たしかにそんな気がする。鶏のスープそうめんといった感じだ。冷麺よりはるかに僕の舌に合う。

 以来、夏のソウルに滞在するたびにチョゲククスを食べた。そこでチョゲククスは店によって味がかなり違うことを知る。鶏のスープや酢、カラシの配合だろうか。

 8月初旬、ソウル在住の日本人と会った。話が終わったのは午後の1時頃で、昼食という話になった。その日は34度。この暑さがチョゲククスを誘う。会ったのは地下鉄の梨水(イス)駅近くのカフェだった。検索してもらった。

「1軒ありますね。おいしいかわからないけど。私の家の近くにいい店があるけど、少し遠いから、この駅の近くにしましょうか」

 チョゲククスは夏に限ったメニューだ。食べることができる店はそう多くない。

 駅に近い路地を入ったところにある店だった。入ると満席。「少し待ってもらえば……」。店員のそういわれ、入口近くに立った。

 客が食べている麺料理がよく見える。ひとりの男性客が白いスープの麺を啜っていた。

「あれ? コンククス。豆のスープ麺。豆乳麺っていうのかな。あれも夏限定。頼んでみましょうか。チョゲククスとコンククス。シェアしましょう」

コンククスはカクテキなどのキムチとすごく合う。豆の甘みとキムチの辛みが絶妙