韓国キムチは一般的には、そのまま食べる。白いご飯に合う漬物だと思う。しかしキムチの食べ方には、それをさらに焼くという食べ方がある。鉄板の上で火を通すから、正確にいうと炒めるということになるかもしれない。

 この食べ方を知ったのは十数年前である。当時、日本ではサムギョプサルが流行っていて、それをソウルで食べようというとき、「焼きキムチ」という言葉を聞いた。キムチを焼く……その食べ方が気になった。

 それ以来、ソウルでは数えきれないほどサムギョプサルを食べた。サムギョプサルにはまったというより、焼きキムチが僕の舌にぴったりフィットしたという方が正確だろう。僕を案内してくれるソウルの知人たちも、サムギョプサルの豚肉の味より、キムチにこだわってくれた。

■サムギョプサル店で、焼きキムチのおいしさに目覚める

 人気のサムギョプサル店の多くは、キムチが食べ放題だった。店の一角にキムチコーナーがあり、そこから勝手にもってくるスタイルだった。キムチは何種類かあったが、白菜キムチはいちばん広いスペースをとっていた。

 好みのキムチを一応は選ぶのだが、肉はひとつのプレートで皆で焼く。何人かで囲むわけだから、誰が選んだキムチかわからなくなってしまうことが多かった。

 サムギョプサルのプレートは2種類あった。水平タイプと傾斜タイプ。水平タイプもわずかに傾斜がついていて、中央部分がやや高くなっていた。キムチはそのプレートの縁に置く。サムギョプサルは豚の三枚肉だから脂肪分が多い。肉を焼くと脂肪分が溶け、それが傾斜に沿って流れ、キムチを浸す。

 傾斜タイプはキムチがより多くの脂肪分がからむように工夫されているように思えた。傾斜タイプが、そのいちばん低いところにキムチを置く。プレートに小さなキムチのダムをつくるような感覚である。焼かれた肉から染み出た脂肪分は、このキムチでせき止められる。

 どちらのプレートも、食べ方は自由だった。焼かれた肉と焼きキムチを一緒に食べたり、肉を焼きキムチで巻く人もいた。どちらにせよ、焼かれた肉と焼キムチが口のなかで混じる。熱でキムチの辛みは弱まる。酸味が強い古漬け系キムチもマイルドになる。熱と脂でキムチに甘みが加わるような気になる。そんなキムチが豚肉とからむことになる。

 このキムチがおいしかった。僕は気がつくと、キムチだけを食べていることがよくあった。豚の脂身が染みたキムチは、それだけでひとつの料理にも思えた。