周囲を歩いてみた。寺の北側に十数棟の日本式の木造家屋が肩を寄せ合うように建っていた。しかし人が住んでいる気配がない。ほとんどが廃屋だった。

 これが群山の日本人街?

 地図を開いてみた。東国寺とは道を隔てた反対側に、旧広津家屋敷と書かれた家があった。そこを訪ねてみた。

 立派な門構えの家が現れた。「ほおーッ」とつい声が出てしまった。日本の武家屋敷跡のように立派なのだ。これが戦前、商人が建てた家だった。

 以前、九龍浦で日本風家屋を見たが、ほとんどの家は門などない庶民のものだった。しかし群山は違う。

 その後、群山の街で戦前、半島に渡った日本人の富を目の当たりにすることになる。(つづく)

東国寺の北側の日本家屋。訪れた当時、ほとんどが廃屋。群山市にはここを日本人街として再開発する計画があると聞いた 写真/中田浩資