第1話、ヒョヌの両親が登場するシーンで、ヒョヌアッパ(チョン・ベス)がヒョヌオンマ(ファン・ヨンヒ)を村人に自慢するシーンがあった。
「ウチの女房は全羅道・筏橋(ポルギョ)の干潟で耕運機を操り、イイダコを獲っていたんだ。すごいだろ」
龍頭里が全羅道だったら、わざわざ全羅道とは言わないだろう。ここだけ見ると、龍頭里は全羅道ではなさそうだ。
また、ヒョヌアッパの村長選挙運動の場面では、対立候補が有権者をもてなす際にテジクッパを出したり、名産品としてリンゴを前面に打ち出したりしていた。テジクッパは釜山を中心とした慶尚道で食べられているもの。リンゴは慶尚道の保守王国・大邱(テグ)の名産品である。
しかし、ヒョヌの実家は梨栽培に力を入れている。韓国で梨といえば全羅南道・羅州(ナジュ)の名産品だ。
ちなみに、ヒョヌアッパ(父)を演じた俳優チョン・ベスは全羅北道(現・全北特別自治道)出身。ヒョヌオンマ(母)を演じた俳優ファン・ヨンヒは全羅南道の木浦出身である。オンマは堂々たる全羅南道訛りを話しているのだが、ややこしいことにアッパは忠清南道訛りで話している。龍頭里=忠清南道説が急浮上するが、忠清南道訛りは、忠清南道の南部と接している全羅北道の北部でも使われているので、全羅北道説も捨てきれない。
そして、龍頭里でヒョヌの実家とシュポ(小さな食料雑貨店)は、慶尚北道の聞慶(ムンギョン)で撮影された。また、13話でヒョヌとヘインがデートで訪れたのは、聞慶の観光スポット、廃線を利用した聞慶鉄路自転車(レールバイク)の九郎里(クランリ)駅だ。
慶尚道の視聴者と全羅道の視聴者に配慮した、ドラマ制作者の絶妙なバランス感覚とでも言おうか。龍頭里はいったい何道なのだろう?
あれこれ思いをめぐらせながら映像を確認していたら、あっさり答えは出た。チラッと移ったヒョヌの履歴書の学歴欄に、「忠南 龍頭高等学校」と書いてあるではないか。忠南とは忠清南道の略称だ。確たる証拠である。
しかし、これに気づく視聴者もそう多くはないだろう。やはり、ドラマや映画では、物語の舞台はボカす傾向にあるようだ。