Netflix配信中の韓国ドラマ貞淑なお仕事』は、1992年の田舎町に住む4人の女性(キム・ソヨンキム・ソンリョンキム・ソニョンイ・セヒ)が、貧困脱出や自己実現のために成人用品(アダルトグッズ)の訪問販売を始める話だ。そのきっかけを作った人物が、ラ・ミラン扮するアダルドグッズ販売会社社長だった。

■朝鮮戦争を経て、韓国人の憧れは「MADE IN USA」へ

『貞淑なお仕事』の序盤に登場する女性社長(ラ・ミラン)は、1980年代、在韓米軍のPX(購買部)に出入りして食料品などを仕入れて売っていたが、見せる下着をはじめとするアダルトグッズを買わないかと米兵からもちかけられ、やがて起業することになる。

 朝鮮戦争を経て世界最貧国となった我が国では、北朝鮮や中国など共産主義国の脅威から守ってくれたアメリカは力と富の象徴で、MADE IN USAは垂涎の的だった。それ以前は、宗主国だった日本の製品が憧れの的だったが、日本の敗戦→解放→朝鮮戦争を経て、日から米に変遷したわけだ。

 MADE IN JAPANが人気だった時代の空気は、1930年代の日本植民地時代を背景とした映画『暗殺』(2015年)で、チョン・ジヒョン扮するミツコが今の明洞近くにある三越(現・新世界百貨店)で買物をするシーンがよく伝えている。

 また、MADE IN USAをはじめとする欧米商品が高嶺の花だった時代の空気は、韓国映像資料院選定の「韓国映画オールタイムベスト100」で16位にランクインしているモノクロ映画『自由夫人』がよく伝えている。朝鮮戦争休戦から3年しか経っていない1956年に作られた作品で、主人公のソニョン(キム・ジョンニム)は、化粧品、ライター、バッグなどの舶来品を販売する店で働いていた。

 本作には、登場人物の会話の中に、「グッドモーニング」「パートナー」「フレンド」「ノータッチ」「ゲットアウト」などの横文字がやたらと出てくるので、気恥ずかしいくらいだ。

映画『自由夫人』のポスターを看板のモチーフにした仁寺洞の飲食店