Netflixで配信中のリアリティ番組『ゾンビバース:ニュー・ブラッド』の舞台は、前作『ゾンビバース』シーズン1に続き、ゾンビ禍に見舞われた韓国。ノ・ホンチョル、イ・シヨンテヨン少女時代)、ユク・ソンジェBTOB)ら芸能人一行が実名で登場し、ゾンビから逃れるためソウル済州(チェジュ)、江陵(カンヌン)、ソウルを行脚するバラエティ風、ゲーム実況風のゾンビユニバースエンターテイメントだ。

 世界各国で映画やドラマが作られ、アイデアが出尽くしたともいわれる「ゾンビもの」だが、本作は過去のゾンビの名作を踏襲しながらも、韓国のゾンビ=Kゾンビとして独自の世界を作り出している。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Kゾンビエンターテイメント『ゾンビバース』シーズン2、ところどころに見られる韓国らしさ

『ゾンビバース:ニュー・ブラッド』第1話は、芸能人一行が済州に避難し、廃業したリゾートホテル敷地内に3日間、隔離されるところから始まる。

 ここで一行が目にするものごとが、じつに韓国らしくて興味深い。隔離所は済州市が管理しているので物資が充実していて、健康的で文化的な生活に必要なものはだいたい揃う。

 避難民「あったかいクンムル(汁物)はないの?」

 市職員「クンムル欲しがる人が多いな~」

 劇中のこのやりとりからもわかるように、韓国人はごはん+汁物をとても大事にする。汁物がないとごはんを食べられない、食べる気がしないという人は多い。

 大衆食堂のメニューにあるペクパンは日本で言う日替わり定食のことだが、これに汁物がつかないことはありえない。キムチクッ(キムチ汁)、テンジャンクッ(味噌汁)、プゴクッ(干し鱈汁)など、種類はさまざまで、いずれもタックンタックン(熱々)であることが重要だ。

韓国の大衆食堂の日替わり定食は、ごはんとスープがメイン。写真は大根と干し鱈のスープ
『ゾンビバース:ニュー・ブラッド』第1話で避難民がゾンビ用の防具にしようとしていたお盆。田舎の食堂でよく見かける

 一行が宿舎の建物に入ると、逃走中に家族と生き別れになった避難民たちが、自分の名前や家族の名前を書いたメッセージボードを掲げている。これは韓国人なら誰もが、1953年の朝鮮戦争休戦後の離散家族再会運動を思い出すだろう。

 ファン・ジョンミンが朝鮮戦争避難民の主人公に扮した映画『国際市場で逢いましょう』にも、ソウル汝矣島の国会議事堂前で主人公と幼なじみ(オ・ダルス)が生き別れになった妹の手がかりを探そうと、無数のメッセージボードが掲げられた広場を歩くシーンがあった。

 宿舎の建物では突然、男が唸り声を上げ、隔離施設内に感染者が!? と、一行は肝を冷やしたが、それは隠し持ったソジュに酔った男だった。韓国人に限った話ではないが、危機的状況になれば酒にすがりつきたくもなるだろう。酔っ払い大国、韓国らしい演出である。

韓国の飲み屋街。最近はゾンビと間違えられるような酔っぱらいはあまり見られなくなった