IUパク・ボゴム主演のNetflix人気ドラマ『おつかれさま』は、ストーリーだけでなく、その背景となっている時代を思い出させるアイテムに注目して見ている。

 筆者は主人公エスンの娘クムミョンと同世代なので、彼女がソウルの大学に通っている1980年代後半の記憶は鮮明だ。とくに7話は「懐かしい!」を連発した。クムミョンは劇中設定では1969年生まれで、IUが若い頃のエスンと一人二役で演じている。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix『おつかれさま』に流れるチョ・ヨンピル往年の名曲「おかっぱ頭」

 ソウル五輪を盾に無理を通そうとする済州の漁村組合長に対し、ムン・ソリ扮する母エスンが抗議行動に出たとき流れたのは、チョ・ヨンピルの大ヒット曲「タンバルモリ(おかっぱ頭)」だ。春風のように軽快なイントロが流れるだけで、多くの韓国人は40年前にタイムスリップしてしまう。

 この曲、日本の韓国映画好きなら聞きおぼえがあるのでは? 映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)の冒頭、ソン・ガンホ操る緑のポニータクシーの車中で流れていた曲だ。

 最近では、チ・チャンウク&シン・ヘソン主演ドラマ『サムダルリへようこそ』のテーマ曲にもなったので、覚えている人もいるだろう。第1話冒頭、『全国のど自慢』の場面で、幼いヨンピルとサムダルがいっしょに歌い踊ったのがこれだった。

 この後の別の場面では、チョ・ヨンピルの日本での代表曲「釜山港へ帰れ」も流れた。この曲のイメージが強過ぎて、日本の人の多くがチョ・ヨンピルは釜山出身だと思っているが、残念ながら京畿道華城市の生まれである。

■『国際市場で逢いましょう』で東方神起ユンホが扮した人気歌手の曲も

 おめかしした母エスンが息子の高校の校庭を歩いているとき流れたのが、ナムジン(南珍)の1975年の大ヒット曲「ニムグァハムケ(あなたと一緒に)」。

 ナムジンはナフナ(羅勲児)と並ぶ1970年代のスーパースターで、韓国のエルビス・プレスリーと呼ばれた歌手だ。

 ナムジンと聞いてピンとこなくても、映画『国際市場で逢いましょう』でファン・ジョンミン扮する主人公がベトナムに出稼ぎに行ったとき、従軍していた歌手と出会うシーンを覚えている人は多いだろう。

 あの場面で東方神起のユンホが扮していたのが軍人時代のナムジンで、彼が口ずさんでいた歌がまさに「ニムグァハムケ」だった。

韓国のエルビス・プレスリーと呼ばれたナムジンのパネルが掲示された釜山の劇場跡。左端がライバルのナフナ