Netflix隣の国のグルメイト韓国編の第2弾(第8話)では、松重豊がソウル忠武路の老舗冷麺店「筆洞屋(ピルドンミョノク)」で、初めて本格的な「平壌冷麺」(スープのある冷やし蕎麦)を食べた。

 ソン・シギョンが松重豊に丁寧に教えていたように、冷麺の専門店には他の韓国料理とはまた違った独特の楽しみ方がある。

■Netflix『隣の国のグルメイト』に登場した平壌冷麺、日本の蕎麦屋飲みにも通じる「先酒後麺」とは?

 20年くらい前は、ソウルで平壌冷麺の店に行くと、高齢の男性数人が北部訛りの言葉を発しながら酒を飲んでいる姿をよく見かけた。多くは朝鮮戦争のとき、北側の政治体制を嫌って南側に避難してきた人たちだろう。

 彼らは冷麺を頼む前につまみを1~2品頼み、冷えたソジュ(韓国焼酎)のグラスを乾す。そして、締めに冷麺をすする。これが「先酒後麺(ソンジュフミョン)」と呼ばれる北側の食文化であり、客のもてなし方のひとつだ。

『隣の国のグルメイト』8話では、ソン・シギョンがまずソジュとマンドゥ(蒸しギョウザ)、チェユク(茹で豚肉)を頼み、あとで冷麺を頼んでいたが、あれがまさに先酒後麺だ。

ソウル踏十里にある冷麺店に飾られていた「先酒後麺」の掛け軸

 平壌冷麺店のサイドメニューでつまみになりそうなのは、蒸しギョウザ、茹で肉(豚肉または牛肉)、プルコギ、緑豆チヂミなど。韓国のマンドゥはサイズが大きく、3つ4つ、つまむとすぐ満腹になってしまうので、おすすめは茹で豚肉だ。牛肉より少し安い。

『隣の国のグルメイト』でソン・シギョンが言っていたように、茹で肉はプレスされているので旨味が凝縮されている。赤身の部分だけでなく脂身も旨く、酒→豚肉→酒の幸せなローテーションが楽しめる。

 つきだしとして出る北部由来のペッキムチ(唐辛子を使わない白菜や大根のキムチ)といっしょに食べたり、店独自の唐辛子味噌(タデギ)をつけて食べたりするのもいい。

 酒は好きなものを選べばよいが、茹で豚肉に合い、見た目も粋なのはやはりソジュだ。

ソウル東部の人気店「西北麺屋」のソジュと茹で豚肉
江原道・楊口(ヤング)郡の人気店のペッキムチ