Netflix『隣の国のグルメイト』シーズン3の最終回(13話)では、ソン・シギョンが松重豊とともにソウルの乙支路3街(ウルチロサムガ)駅周辺の零細印刷工場街にある店でカルグクス(韓国式手打ちうどん)を食べた。
筆者は日本の人たちといっしょに韓国で食べ歩きすることが多いから気づいたことだが、カルグクスは韓国料理のなかでもかなり異彩を放つ食べ物である。
■『隣の国のグルメイト』でソン・シギョンが松重豊を案内した乙支路3街の今
ソン・シギョンが松重をカルグクスの店に案内する道すがら話していたように、乙支路3街駅の周辺は今でこそレトロブームを背景に、若者向けのスタイリッシュな飲食店が目立っている。
しかし、コロナ禍の少し前までは、「ここが本当に明洞最寄りの乙支路入口駅から1駅の街?」と日本の人からよく言われるくらい枯れた味わいのある街だった。この数年で高層ビルと低層階の雑居ビルや工場が共存する街となり、雨でも降ればハリソン・フォード主演の往年の名画『ブレードランナー』の冒頭シーンを思わせるような風景と出合うことができる。
■ヨモギ入りカルグクスは日本の人向き
ソン・シギョンと松重豊が食べていたヨモギ粉を練り込んだ麺(スッカルグクス)は、団子などでヨモギに馴染んでいる日本の人には親和性が高いだろう。
筆者は日本の人たちと乙支路入口駅近くのしゃぶしゃぶ料理店で、〆にヨモギ麺を入れて食べたことがあるのだが、牛のダシが出たスープと香りがさわやかなヨモギ麺の相性は抜群で、何度もお代わりしてしまった。同行の日本人の反応も同様だった。その後、彼らは日本で春先にヨモギ麺が出回ると、乾麺や生麺を買い込み、家でしゃぶしゃぶをするときの〆に食べているという。