年に2回はソウルを訪ねる横浜市在住の女性Kさん(32歳)は、この江南駅の地下街ショッピングは、ソウル滞在の削れないアイテムだという。

「とにかくなんでもあるんです。ソウルのなかで、これほど多品種の店が集まっているところは少ない気がします。以前、買い物は明洞だったけど、一時期、急にコスメ店が増えて雑貨系やファッション系の店が減ってしまったんです。明洞は外国人客が多いから、いま、なにが売れる……といった情報に敏感なんでしょうね。コスメを買うには明洞はよかったけど、それ以外となると。

 そこへいくと江南駅の地下商店街はいろんな店がある。たぶんソウルの人たちが買い物にやってくるからだと思います。値段も安い。最近はここで1日が終わっちゃうこともある。宝物探し感覚でまわってます」

 江南というと、高級というイメージがあるが、それは地上の世界。そこでしっかり目を養って、買うのは地下……という役割分担があるのだろうか。

 江南駅の地下商店街の店密度は高い。アクセサリーの店が、薬局の前の幅1メートルほどのスペースに店を広げる。ボードに格子をとりつけ、そこにアクセサリーを吊るすディスプレイ。安いのか、デザインが人気なのか、ボードの前には人だかりができている。地下商店街はそんな庶民の世界に映る。

 その感覚が日本人観光客にも受けるのかもしれない。明洞は外国人にすり寄りすぎてしまった。ネットの発達で、日本人もソウルの買い物情報には詳しい。レアなものをみつけるのは明洞は物足りなくなってきたのか。江南はシンノンヒョンもそうなのだが、外国人に媚を売るようなところがない。それが江南というところだろうか。

 しかし地上に出ると、また別の世界が待っている。大通り沿いは高級店が多いが、平行に走る裏通りに入ると、急に日本語の看板が目につくようになる。焼き肉店、マッサージ、ナイトクラブ……。明らかに江南にやってくる日本人を意識した店になる。明洞から移転してきた店もあるのかもしれない。

 その道を歩いてみる。するといま、江南の広がりつつある別の日本語看板が気になってくる。それは江南の新しい顔のように映った。