■劇中、本物の釜山方言(慶尚道方言)を披露した俳優たち
しかし、釜山出身の俳優たちが作品で釜山人らしさを存分に発揮しているかというと疑問である。俳優が醸し出す釜山人らしさといえば、なんといっても方言だが、ドラマや映画で本物の釜山方言(と、その周辺の慶尚道方言)を聞かせてくれた俳優となると数が限られてくる。
まず思い出すのは、1990年代の釜山が舞台のドラマ『応答せよ1997』で本物の釜山訛りを披露したチョン・ウンジ(A pink)だ。共演したソ・イングクも慶尚南道の蔚山市(現・蔚山広域市)出身である。チョン・ウンジは架空の町が舞台だった『Missナイト&Missデイ』でも慶尚道訛りを聞かせてくれた。
『おつかれさま』で詐欺まがいの旅館の女将に扮し、IUやパク・ボゴム扮する主人公を追い詰めたカン・マルグムの釜山弁も本物だ。映画『チャンシルさんには福が多いね』ではソウルで暮らしながらも天然の慶尚道弁を話す映画プロデューサーを演じ、人間味を感じさせていた。
『劇映画 孤独のグルメ』で松重豊と共演したユ・ジェミョンは長らく釜山での演劇活動に注力しており、釜山人であることに誇りをもっている俳優だ。『梨泰院クラス』では流暢な標準語を話していたが、『恋のスケッチ ~応答せよ1988~』では釜山出身の教員役で本物の訛りを披露していた。
また、釜山出身ではないが、西隣の金海出身のソン・ガンホの方言も本物だ。実際に金海出身だったノ・ムヒョンの弁護士時代時代を演じた映画『弁護人』では法廷以外の場面で生活感たっぷりの釜山弁を、『シークレット・サンシャイン』ではカーセンターの俗物社長に扮し、脂っこい慶尚道方言が印象的だった。
『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』のキム・ユンソクは忠清北道で生まれたが、すぐ釜山に移り20年以上暮らしたので、事実上の釜山人といえるだろう。釜山が舞台の映画『暗数殺人』『極秘捜査』では訛りの強い刑事に扮しているが、彼の場合、『ワンドゥギ』『チェイサー』や『モガディシュ 脱出までの14日間』での荒っぽいソウル弁のイメージが強いので、聴く側の先入観でなんとなく違和感を覚えてしまう。
釜山出身のベテラン俳優キム・ヘスクは、『カンチョリ オカンがくれた明日』で重度の認知症の女性に扮し、韓国語でいう自然産(チャヨンサン)、天然そのものの釜山弁を聞かせてくれた。
ファン・ジョンミンは釜山映画の代表作『国際市場で逢いましょう』で役柄は半島北部から来た朝鮮戦争避難民だったが、ソン・ガンホと同じ釜山文化圏(馬山)出身だけに、流暢な釜山弁を披露していた。
また、3月6日から日本で公開される映画『しあわせな選択』で刑事に扮しているオ・ダルスは、前述の『国際市場で逢いましょう』でファン・ジョンミン扮する主人公の相棒を演じ、影島出身らしい愛嬌ある釜山弁を聞かせてくれた。

