先日、私の事務所の代表(韓国ロス3年の日本人男性)が、埼玉から高速バスで大阪まで行き、南港から定期国際客船パンスタードリーム号に乗って翌朝釜山に着き、1泊したあと、KTXでソウルに向かうという酔狂な旅をした。
シリーズ連載5回目は、2000ウォンから2500ウォンに値上がりした楽園洞のクッパを食べ、街歩きに出かけるところから始まる。
■ソウルの朝の散策、楽園洞クッパの変わらない味
“失われた3年間” を取り戻すためには、コロナ以前のルーティンな行動をするに限る。仁寺洞辺りに宿を取ったら、朝食は当然あの店である。
仁寺洞サゴリ(四つ角)を東に歩く。左手の黄色い看板の両替屋は健在で、不愛想なおやじもそのままだった。楽園商街ビルを右手に見ながら横断歩道を渡る。荷台にザルを満載したトラックも3年の空白が嘘のようにそこにあった。餅屋が多いとはいえ、そうそうザルの買い替え需要があるとは思えない。商売になるのだろうか。
ちなみに楽園洞は、イ・ヨンエ主演ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』に出てきたような女官たちが朝鮮王朝が崩壊して食うに困り、餅屋を始めたところだ。
楽園商街の東側沿いのアグチム横丁も健在だった。今夜は辛いアンコウでソジュもいいな。朝メシもまだなのにノドが鳴る。
長寿番組『KBS全国歌合戦』の名司会者で、昨年亡くなったソン・ヘさんのイラストが描かれたクッパの店に座ると、3分も待たずに汁と白メシと大根キムチに再会できた。
汁をすすっている先客たちが若返っている気がする。いや、自分が年を取ったのだ。500ウォン値上がりしたとはいえ、日替わり定食が7000ウォンするこの時代に2500ウォンは破格である。
ん? ケランフライ(目玉焼き)という言葉が飛び交っている。新メニューらしい。目玉2つで2000ウォンと良心的だ。これで栄養のバランスがよくなる。ケランフライを夢中で食べている隣席の男たちを見ていると、映画『トンケの蒼い空』のチョン・ウソンとキム・ガプスを思い出す。