■韓国屈指の大衆酒場も健在

 私は20年くらい前から、昔ながらの大衆酒場を求めて韓国全土を歩いてきた。そのなかでも屈指の店が群山の「ホンチプ」だ。

 寡黙だが、ホスピタリテイあふれるハルモニが切り盛りしている。安さ・旨さ・情緒の三条件を満たした貴重な酒場である。

 5年前、女将は店に立っていたものの引退をほのめかしていた。これが見納めかと覚悟を決めていたのだが、先日ドキドキしながら行ってみると、息子さんに手伝ってもらいながら店に出ていたのでホッとした。

 酒を頼むと、女将がおまかせでつまみを調理して出してくれる。今の時期はパクテと呼ばれる黄海でしか獲れないという魚が旨い。シタビラメの仲間で、こぶりなのに身が多く、揚げ焼きがマッコリのつまみとして最高だ。

 女将の高齢化でこうした店は急速に姿を消している。映画を観て、群山に行ってみたくなった人にはぜひ立ち寄ってもらいたい。

昔ながらの大衆酒場「ホンチプ」との最初の出合いは2006年。拙著『マッコルリの旅』の取材のときだった
「ホンチプ」のつまみ、パクテ(シタビラメの仲間)の揚げ焼き
「ホンチプ」の外観 住所:群山市新栄洞57-10(群山公設市場内)
群山市北部にある永華市場にはバーストリートができ、若返りが図られていた

ソウルから群山への行き方

 ソウル駅または龍山(ヨンサン)駅からKTX山川(サンチョン)に乗って益山(イクサン)まで行き(所要1時間20分程度)、益山駅から在来線かバスで群山まで30分程度。

※取材協力: 群山市文化芸術課、全羅北道 国際協力課 国際交流係、全羅北道 文化体育観光局 観光産業課